初めての贈り物
2019/07/11
「正式に結婚することになったよ」
昨年の夏ごろ、結婚の挨拶のために妻とともに茨城の両親のもとへ帰省をしました。
事前に報告を済ませていたこともあり、その場は和やかに進行していると、ふとしたタイミングでひとつ年下の妹がリビングに入ってきたのです。
十数年以上まともに話していなかった妹。
その手には小箱が抱えられていました。
幼いころはふたりでよく遊んでいました。
ただ、これといったきっかけはなかったのですが、小学校高学年になると徐々に関係が悪化し、会話をすることがほとんどなくなっていきました。
その関係のまま大人になり、日本財託への転職が決まったことを機に、私は実家を離れたのです。
兄妹の仲が悪いのは良くないと思いつつも、実家を離れ、普段顔を合わせなくなったことで拍車がかかり、帰省しても会話は無いまま時間だけが過ぎていきました。
昨年の5月ごろ、連休を使って帰省しました。
妻との結婚が決まったため、まずは単身でその報告を両親にするためでした。
両親への報告は問題なく済んだものの、妹には気まずさもあり、声をかけるタイミングが見つかりません。
ただ、このまま帰ってしまっては、関係は変わらずそのまま。
いろいろ考えた挙句、伝えたいことを落ち着いて整理できることから"手紙"を書くことにしました。
『結婚するので、夫婦共々よろしく』
最初は結婚することだけを伝えるつもりでした。
しかし、筆が進むにつれて幼いころの妹との思い出や仲が悪くなってしまった十数年間のもどかしさ、兄としての至らなさや申し訳なさなどが溢れてきたのです。
そして、少しずつ関係を良くしていきたい思いもしたためて、妹の部屋をノックしひと声かけて、ドアの隙間に手紙を差し込み、東京へと帰りました。
それから数カ月後、妻と2人帰省し、両親への正式な結婚の挨拶を済ませると、妹が小箱を手にリビングに入ってきたのです。
「はい、これ結婚祝い」
突然のことに驚きを隠せず、戸惑いながら小箱を受け取り、丁寧に開けてみると、そこには犬をかたどった陶器で作られた箸置きが2つ入っていました。
この十数年間ほとんど話したこともなければ、プレゼントを贈りあったことなどありません。
兄妹の間で交わされた、"初めての贈り物"でした。
「ありがとう。大切に使うよ」
短い会話でしたが、心の底から嬉しさがこみ上げてきました。
いただいた箸置きは、毎晩食卓で活躍しています。
今でもその情景が目に焼き付いていますが、ようやく歩み寄り始めた関係に、思わず笑みがこぼれます。
なかなか帰省することはできず、妹と顔を合わせる機会は少ないですが、
兄妹の間にできた溝を埋めていけるように、このことをきっかけに少しずつ会話を増やしていければと思っています。
日本財託管理サービス 経理部 冨田 晋也(とみたしんや)
◆ スタッフプロフィール ◆
茨城県石岡市出身の37歳。
経理部にて決算の取りまとめと、会計情報の分析を行っています。
最近は新婚太りが気になり、毎週ジョギングをするも、体重増加が止まらないのが悩みです。