ことばの力
2022/06/09
レース中のH・Hさん
「結果は俺に預けて、お前はいつも通りの滑走をしろ」
この言葉は、私が現役時代にお世話になった恩師Kさんの言葉です。
私はスキー好きの両親の影響で2歳からアルペンスキーというスポーツをしていました。
アルペンスキーは、旗門で示されたコースに沿って、雪山を滑り降り、
タイムを競い合う競技です。
最高速度100キロにも達するスピードと、数センチ単位での繊細なターン、
とっさの判断が要求される戦略性。
私自身、気が付いたらアルペンスキーの魅力にどっぷりとはまっていました。
そのおかげもあり、中学1年の4月、
カナダで開催された14歳以下の国際大会に参加することになったのです。
この大会で日本代表コーチを務めていたのが、Kさんでした。
当時の私にとって、日の丸を背負って挑む初めての大会です。
『日本のレベルが低いと思われないよう、頑張らないと』
思えば思うほど緊張してしまい、現地での練習では思うように体が動きません。
焦りと不安がどんどん大きくなっていったのを覚えています。
そんな状態で迎えた本番当日。
待機場所では自分よりも背の高い海外の選手たちに圧倒され、
レースをする前から弱気になっていました。
選手たちは次々にコースを滑り降り、自分の番が近づいてきます。
私の口数も少なくなり、表情は強張っていました。
『もうあと数分で自分の番...。』
「大丈夫だ。日本代表として来てはいるが、やることは変わらない!」
その時、Kさんが私に話しかけてくれました。
「お前はいつも通りの滑走をしろ。結果は俺に預ければいい。」
その言葉は不思議と私の心にストンと落ち、
不安でいっぱいだった思考がクリアになっていったのを覚えています。
『そうだ、今はいつも通りの滑りをイメージするだけでいいんだ』
このKさんの一言で私の心は落ち着きを取り戻し、
平常心をもって競技に挑むことができました。
その結果、100人近くの選手のうち、個人では5位に入賞。
団体ではスキー後進国の日本では異例の優勝を果たしたのです!
その後も高校2年まで毎年、日本代表として国際大会に出場し続け、
コーチのKさんはいつしか恩師と呼べる存在になっていました。
ちょっとした一言が人の心に大きな影響を与えることを学びました。
今、私は社会人2年目の不動産の仲介営業職として
日々、協力会社様たちと向き合っています。
時には泣き言やいいわけを吐きたくなる状況に陥ることもありますが、
その気持ちをそのまま言葉にしないようにしています。
ネガティブな言葉をポジティブに変換し、
他人に対しても、自分に対しても、常に前向きでいること。
これからも「ことばの力」を信じて、恩師Kさんのように誰かの人生を後押しするような、
そんな存在になりたいと思います。
日本財託 事業部流通アドバイザリー課
H・H
◆ スタッフプロフィール ◆
福島県会津美里町出身の23歳。
事業部流通アドバイザリー課に所属し、主にオーナー様のご所有物件の買取や、マンションやアパート、土地などの売買仲介業務を担当しています。
つい最近、スキー指導者の国際ライセンスを取得。今後もスキーに関わり続け「恩返し」をしていきたいです。