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掲載日2026.07.13

FIREにはいくら必要?日本の生活費・税金から逆算する目標資金額

FIREにはいくら必要?日本の生活費・税金から逆算する目標資金額

はじめに

FIRE(Financial Independence, Retire Early)は、経済的な自立を達成して早期に退職する生き方として広まりました。しかし、日本でFIREを目指す場合、いくら必要なのかを正しく見積もらなければ、資金不足や生活の破綻につながりかねません。私は不動産業界に36年以上身を置き、1万人を超えるオーナーの資産形成を見てきましたが、FIREの達成可否はまさに「数字の精度」で決まります。

生活費の水準、税・社会保険料の負担、年金への影響、さらには医療・介護費用まで含めて計算することが欠かせません。本記事では、公的統計や各種調査のデータをもとに、日本でFIREを実現するための目標資金額を逆算し、計画の注意点を整理します。あわせて、私自身が長年提案し続けてきた「家賃収入という私的年金」という選択肢についても触れていきます。

FIREの定義と4%ルール

FIREと従来の早期退職の違い

FIREと従来の早期退職は、退職後の生活費をどこから得るかという点で大きく異なります。従来の早期リタイアは、仕事や事業で一生困らないほどの資産を築いた人が定年前に仕事を辞め、貯蓄を取り崩しながら暮らすのが一般的でした。一方FIREは、投資の運用益で生計を立て、投資元本を目減りさせることなく暮らしていく手法です(参照*1)。

つまり従来型は「貯蓄の切り崩し」が前提であるのに対し、FIREは「資産を減らさずに運用益だけで生活する」仕組みを目指します。この違いがあるからこそ、FIREではいくら必要かを算出する際に、単純な貯蓄額ではなく、運用利回りと生活費のバランスが問われることになります。

4%ルールの計算式と根拠

FIREに必要な資産の目安として用いられるのが「4%ルール」です。これは「退職時に保有する資産の4%に相当する額を毎年取り崩して生活費に充てても、30年程度で資産が尽きるリスクが非常に低い」という経験則で、アメリカ・トリニティ大学の研究、通称「トリニティスタディ」に基づいています。米国株式市場などの長期的リターンとインフレ率の関係から導き出されたものです(参照*2)。

4%ルールを逆算すると、「毎年の生活費の25倍」が必要資産額の目安になります。たとえば年間の生活費が240万円、つまり月々20万円の場合、25倍は6,000万円です。貯蓄額が6,000万円に達すれば、早期リタイアが可能という計算になります(参照*1)。

このようにFIREでいくら必要かを考えるうえで、4%ルールは出発点となる計算式です。ただし、この数値はあくまで米国市場のデータに基づく目安であり、日本にそのまま当てはめられるかどうかは別の検討が必要です。ここで大切なのは、「取り崩し前提」で資産を見積もるのか、それとも「取り崩さずに毎月入ってくる収入」で生活費を賄うのかという発想の違いです。

日本の生活費から逆算する目標額

家計調査にみる世帯別消費支出

FIREにいくら必要かを算出するには、まず自分の生活費を正確に把握する必要があります。総務省の家計調査によると、2025年の二人以上の世帯(平均世帯人員2.87人、世帯主の平均年齢60.7歳)における消費支出は1世帯あたり月平均314,001円で、前年に比べ名目4.6%の増加となりました。物価変動3.7%の影響を除いた実質でも0.9%の増加です(参照*3)。

総世帯(2023年)の消費支出計は247,322円という数値も公表されています(参照*4)。世帯人数や構成によって月々の支出額には大きな幅があるため、FIREの目標資金を計算する際には、自分の世帯タイプに近いデータを選んで当てはめることが大切です。

単身・夫婦別の必要資産シミュレーション

生活費の水準が分かれば、4%ルールの「年間生活費×25倍」で必要資産額を逆算できます。2022年度の調査では、老後の最低日常生活費は月23.2万円、ゆとりある老後生活費には月37.9万円が必要とされています。この数値をもとに試算すると、最低ラインで月23.2万円×12カ月×16.6倍(取り崩し率6%想定)で約4,621万円、ゆとりを確保する場合は月37.9万円×12カ月×25倍(取り崩し率4%想定)で約1億1,370万円です(参照*1)。

夫婦と子ども1人の世帯で月間平均33万円の生活費を想定したケースでは、330,000円×12カ月×25倍でおよそ1億円が必要になります。しかも新NISAの1,800万円という枠を超えた投資額に対する運用益には20.315%の税率がかかります(参照*5)。

このように、FIREにいくら必要かは世帯構成や目指す生活水準によって4,600万円台から1億円超まで大きく変わります。税負担も含めて計算しなければ、見積もりが甘くなる点に注意が必要です。実は、2021年6月に私どもがオーナー様1,254名を対象に実施したアンケート調査では、回答者の14%、つまり7人に1人がすでに経済的自由を実現されていました。しかも、そのうち約4割は50代以上の一般のサラリーマンの方々です。FIRE達成までの平均期間は約13年、平均総所有戸数は15戸という結果も出ており、毎年1戸ずつコツコツと積み上げていけば、決して夢物語ではないと考えられます。

日本で4%ルールが成立しにくい理由

インフレと実質利回りの壁

4%ルールの「4%」は名目利回りではなく実質利回り4%を指します。物価上昇率が3%であれば、それに4%を加えた名目7%の運用利回りが必要になるため、かなりハードルが高くなります。こうした事情から、米国発のFIREの概念は日本ではほぼ成り立たないという指摘があります(参照*6)。

4%ルールの根拠は、平均的な株式市場の年間成長率7%から平均的な年間インフレ率3%を差し引いた数字とされますが、実際にはそれぞれ上下が発生するため、あくまで目安にすぎません(参照*5)。

日本では実質利回り1〜2%でさえ成り立ちにくいのが実情です。日本取引所グループのプライム市場の平均配当利回りは約2%(2026年1月時点)ですが、物価上昇率が3%の環境では実質で約1%のマイナスになります。実際の運用は、割り負け幅をどう小さくするかという工夫をしているのが現状です(参照*6)。ところが、東京23区の中古ワンルームマンションであれば、表面利回りは3.5〜4.0%程度、築古物件では4.3%前後を見込めます。さらに家賃自体は物価上昇局面でも下落しにくく、リーマンショックや東日本大震災といった経済危機の最中でも、自社管理物件の年間平均入居率は99%以上を維持してきました。インフレに強い「実物資産」であることは、株式・債券との大きな違いと言えるでしょう。

税・社会保険料の負担構造

FIREにいくら必要かを正確に把握するには、運用益だけでなく税や社会保険料の負担も織り込む必要があります。総務省の家計調査によると、二人以上の世帯のうち勤労者世帯の可処分所得(実収入から直接税・社会保険料などの非消費支出を差し引いた額)は532,408円で、前年に比べ名目1.9%の増加でしたが、実質では1.7%の減少となりました(参照*3)。

実収入が増えても、税と社会保険料の天引き後に残る手取り額は物価上昇に追いついていないことを示すデータです。FIRE後に勤労所得がなくなったとしても、国民健康保険料や住民税などの負担は続きます。新NISAの非課税枠を超えた運用益には20.315%の課税がされるため、表面上の利回りだけで生活費を計算すると資金不足に陥りやすくなります。

家賃収入という「もう一つの解」

ここで一つ、視点を変えてみたいと思います。4%ルールは「資産を取り崩しながら生きる」設計ですが、給与のほかに、もう一つの収入源を持つことができれば、そもそも取り崩す必要すらありません。私が36年以上にわたって提案してきたのは、東京23区の中古ワンルームマンションを長期保有し、家賃収入という「私的年金」を作る方法です。ローンを完済したマンション1戸からは、毎月7〜9万円前後の家賃収入が手元に残ります。3戸あれば月20万円超、5戸あれば月35万円超と、最低日常生活費に届く水準が見えてきます。

大切なのは、ローンを「人のお金で資産形成する道具」として捉える発想です。家賃収入で元本を返済し、繰上げ返済を組み合わせていけば、給与から大きな持ち出しをせずに資産が積み上がります。さらに団体信用生命保険が付くため、生命保険代わりにもなる。株式やFXのように毎日相場をチェックする必要もなく、信頼のおける賃貸管理会社に委託すれば、本業で忙しいサラリーマンの方でも無理なく続けられる仕組みです。

フルFIREとサイドFIREの比較

必要資産額の差と判断基準

フルFIREとは、会社員やパート・アルバイトなどの仕事をせず、投資による不労所得だけで生活費を確保する方法です。居住地や月々の消費額によって必要な生活費は異なりますが、ゆとりをもって暮らすにはまとまった資産が求められるため、短期間で達成するのは難しいとされています(参照*1)。

前章で示したとおり、ゆとりある生活費を基準にすれば1億円超、最低限の生活費でも4,600万円台の資産が必要です。フルFIREを選ぶかどうかは、勤労収入をゼロにしても運用益だけで暮らせるだけの資産を用意できるかどうかが判断の分かれ目になります。

サイドFIREの資金ハードル低減効果

サイドFIREは、運用益に加えて副業やパートなどの勤労収入を組み合わせることで、必要資産額を引き下げる方法です。最低日常生活費の月23.2万円のうち月5万円を勤労収入でまかなうと想定した場合、必要資産は(23.2万円-5万円)×12カ月×16.6倍で約3,625万円となり、フルFIREの約4,621万円に比べて約1,000万円も少なくなります(参照*1)。

およそ1,000万円の差は、準備期間に換算すれば数年単位の短縮につながります。FIREにいくら必要かを考える際に、フルFIREだけでなくサイドFIREを選択肢に入れることで、達成の現実味は大きく変わります。私のお客様にも、35歳のときに最初の1戸を購入し、5年ほどかけて3戸まで拡大、その直後に独立起業されたAさんという方がいらっしゃいます。結婚直後で不安はあったそうですが、「マンション3戸から得られる家賃収入があったからこそ踏み出せた」と語っておられました。家賃収入は、サイドFIREの「副業収入」枠を安定的に埋めてくれる存在になります。

年金・公的保障との関係

早期退職が年金受給額に与える影響

FIREで早期退職すると、将来もらえる年金額が減る点を見落としてはなりません。会社員が加入する厚生年金は、現役時代に納めた保険料の額と期間に応じて受給額が決まる仕組みです。早期退職によって厚生年金の払込年数が短くなれば、当然受け取れる年金も減ります(参照*1)。

厚生労働省(2026年度版)が示した標準的な年金額は月額約23万7,279円であり、老齢基礎年金だけの場合は月額約7万608円にとどまります(参照*7)。早期退職で厚生年金の加入期間が短くなれば、この標準額よりもさらに少ない金額しか受け取れません。FIREにいくら必要かの試算では、年金の目減り分も上乗せして考える必要があります。

在職老齢年金制度の見直しと選択肢

完全にリタイアするのではなく、FIRE後も一定の収入を得ながら年金を受給する場合には、在職老齢年金制度の仕組みが関係してきます。政府広報によると、2026年4月からは支給停止の基準額が月65万円に引き上げられました。この見直しにより、働きながら老齢厚生年金をこれまでより多く受け取れる人が増えます(参照*8)。

基準額の引き上げは、サイドFIREのように勤労収入と年金を組み合わせるスタイルにとって有利に働く変更です。完全なリタイアを選ぶか、一定の収入を維持するかによって、年金の受取額と必要資産額の計算結果は変わるため、自分がどの働き方を選択するかを踏まえたうえで資金計画を立てることが欠かせません。

FIRE計画の落とし穴と注意点

医療・介護費用の見落とし

FIRE後の生活費を見積もる際に忘れがちなのが、医療や介護にかかる費用です。2022年度の調査によると、自分が将来要介護状態になった場合について「不安感あり」と回答した人は88.6%にのぼり、公的介護保険でまかなえると考えている人はわずか14.5%でした。一方、「まかなえるとは思わない」は77.6%に達しています(参照*9)。

同じ調査では、老後生活に対して「不安感あり」と答えた人は82.2%で、その理由として「公的年金だけでは不十分」が79.4%と最も高く、「日常生活に支障が出る」が57.3%、「自助努力による準備が不足する」が36.3%と続いています。FIREの資金計画では月々の生活費だけでなく、長期にわたる医療費や介護費の備えまで考慮しなければ、想定外の支出で計画が崩れるおそれがあります。

資金不足・生きがい不足による挫折

FIREを達成した後に計画が行き詰まるケースも報告されています。FIREムーブメントが広まってからある程度の時間が経ち、資金不足や生きがい不足で「FIRE卒業」、つまり再び働き始める人も出てきています(参照*5)。

前節で触れたとおり、日本では実質利回りの確保が難しく、割り負け幅をどう小さくするかが運用の実態です。見積もりどおりに運用益が得られなければ元本の取り崩しが早まり、資金不足に直結します。さらに仕事をやめたことで社会的なつながりや達成感を失い、精神的な充実を保てなくなるリスクもあります。FIREにいくら必要かという数字の問題だけでなく、退職後の生活そのものを具体的に描いておくことが、挫折を防ぐうえで欠かせない視点です。つまり、目指すべきは「働かない自由」ではなく、「働き方を選べる自由」ではないでしょうか。家賃収入があれば、本当にやりたい仕事に挑戦することも、ボランティアで社会に貢献することも、家族との時間をたっぷりとることも可能になります。

おわりに

FIREにいくら必要かは、世帯構成や生活水準によって約3,600万円から1億円超まで大きな幅があります。しかも日本では4%ルールの前提となる実質利回りの確保が難しく、税・社会保険料の負担や年金受給額の減少も計算に織り込まなければなりません。だからこそ、資産を取り崩す前提ではなく、毎月コツコツと家賃収入を生み出してくれる「資産」を持つという発想が、日本の現実に合った答えになると考えています。

目標資産額だけでなく、サイドFIREという段階的な選択肢や、医療・介護費の備え、退職後の生きがいまで含めて計画することが、FIREの実現可能性を左右します。まずは自分の生活費を正確に把握し、現実に即した数字で資金計画を組み立てることから始めてみてください。そして、不動産投資の収益は「資本×利回り×時間」の3要素で決まります。なかでも「時間」は誰にも平等に与えられた、しかし刻一刻と目減りしていく資源です。私のお客様からも「もっと早く始めていれば良かった」という声を本当に多くいただきます。行動を起こすなら、できるだけ早いほうが良いと言えるでしょう。

参照

執筆者

日本財託Times編集部

松坂 智大

  • 宅地建物取引士
  • FP2級
  • AFP
  • 相続診断士

東京中古ワンルームマンションを中心とした不動産投資、資産形成、賃貸管理に関する情報を発信しています。
日本財託グループ内に蓄積された不動産投資・賃貸管理に関する知見や、セミナー参加者の関心事項、公開情報などをもとに、読者が理解しやすい記事を制作しています。

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