家賃収入
掲載日2026.10.29
家賃収入の税金シミュレーションで見る手取りと申告判断
この記事のまとめ
家賃収入にかかる税金は、総収入金額から必要経費を差し引いて不動産所得を求め、課税される所得金額に所得税の速算表を当てはめる流れで試算します。手取りを把握するには、収入に含める項目と経費にできる費用を正しく分けることが出発点です。給与所得者については、一定の要件を満たすことで確定申告が不要となる基準も定められています。
- 不動産所得の金額は、総収入金額から必要経費を差し引いて計算します。
- 家賃や更新料は原則として契約で定めた支払日に計上し、敷金は返還を要しないことが確定した日に収入とします。
- 所得税の税率は5%から45%の7段階で、速算表の税率と控除額から税額を求めます。
- 給与の収入金額が2,000万円以下などの条件を満たし、給与所得と退職所得以外の所得が20万円以下であれば、申告が不要となる場合があります。
1. 家賃収入の税金シミュレーションの全体像
不動産所得の計算式と位置づけ
家賃収入の税金シミュレーションは、まず不動産所得を算出するところから始まります。
不動産所得は、税法における所得区分のひとつです。土地や建物などの不動産の貸付け、不動産の上に存する権利、船舶・航空機の貸付けなどによる所得がこれにあたります。金額は、「不動産所得の金額=総収入金額-必要経費」という計算式で求められます(参照*1)。
つまり、受け取った家賃の総額がそのまま課税対象になるわけではなく、必要経費を差し引いた後の金額が計算の土台となります。
ここで大切なのは、税金の話に入る前に「手取り」を正確につかむことです。表面利回りだけを見て購入し、管理費や修繕積立金、賃貸管理代行手数料を差し引いた後の数字に驚く方は少なくありません。家賃収入という私的年金を育てるなら、手取り利回りで考える習慣をつけたいところです。
家賃収入の計上時期
試算に用いる収入は、どの年分に計上するかによって金額が変わってきます。
不動産を賃貸して受け取る家賃、地代、更新料などは、不動産所得の総収入金額に算入します。収入に計上すべき時期は、契約や慣習などにより支払日が定められている場合はその定められた支払日、支払日が定められていない場合は実際に支払を受けた日となります(参照*2)。
したがって、前払いで受け取った家賃であっても、計上する年は契約上の支払日の定めによって判断されます。
課税所得から税額までの流れ
不動産所得を算出した後は、課税される所得金額に税率を適用して所得税額を計算します。
課税される所得金額は、1,000円未満の端数を切り捨てた後の金額です。この金額に対する所得税額は、所得税の速算表を利用するとスムーズに求められます。
具体例として、課税される所得金額が7,000,000円の場合、税額は「7,000,000円×0.23-636,000円=974,000円」となります(参照*3)。
このように、税額は課税される所得金額に応じた税率と控除額の組み合わせによって決まります。
2. 収入に入るものと必要経費
総収入金額に含まれるもの
総収入金額には、毎月の家賃収入だけでなく、一時金として受け取る金銭も含まれます。
不動産を賃貸して受け取る家賃、地代、更新料などは、不動産所得の総収入金額に算入します。家屋や土地の賃貸に伴い一時金として受領する権利金や礼金は、資産の引渡しを要する場合は引渡しのあった日、引渡しを要しない場合は契約効力発生日の収入に計上します。名義書換料、承諾料、頭金などの名目で受け取る金銭も同様の扱いです。
敷金や保証金は本来預り金であるため受領時点では収入になりませんが、返還を要しないことが確定したものは、その確定日に収入へ計上します(参照*2)。
預り金である敷金と、収入となる礼金や権利金を正しく区別して計上することが重要です。
必要経費になるもの・ならないもの
必要経費に算入できる費用とできない費用は、あらかじめ明確に区別しておく必要があります。
事業所得、不動産所得、雑所得の金額を計算する上で必要経費に算入できるのは、総収入金額に対応する売上原価その他直接要した費用と、その年に生じた販売費・一般管理費など業務上の費用です。原則としてその年において債務の確定した金額が必要経費となりますが、減価償却費のように債務確定を要しない費用もあります(参照*4)。
個別の項目による取り扱いは次のとおりです(参照*4)。
- 業務用資産の購入資金など、業務に要した借入金の利息は必要経費になります。
- 事業税は全額必要経費となる一方、固定資産税は業務用の部分に限って算入できます。
- 所得税や住民税は必要経費になりません。
- 不動産所得を生ずべき業務に供する土地等の取得に要した負債利子の額は必要経費になりますが、不動産所得が損失となった場合、その土地等に係る利子相当部分の損失は生じなかったものとみなされ、他の所得との損益通算は行えません。
ワンルーム投資の実務では、管理費、修繕積立金、賃貸管理代行手数料、損害保険料、減価償却費、修繕費、不動産取得税や固定資産税、ローン返済額のうち利息部分などが経費の中心になります。一方で、ローン返済の元本部分や、プライベートな飲食・遊興費は経費にはなりません。
3. 税率と手取りのシミュレーション
ワンルーム1室を所有する場合の試算例
計算の流れを見るため、給与収入700万円の会社員が、月額家賃8万円のワンルームを1室所有するケースを仮定します。年間家賃収入は96万円、賃貸管理費、固定資産税、保険料、借入金利子など現金で支払う必要経費を合計24万円、減価償却費を36万円とすると、不動産所得は「96万円-24万円-36万円=36万円」です。
給与所得など各種控除を反映した後の課税所得が400万円で、他の条件が変わらないと仮定すると、課税所得は436万円となります。どちらも所得税率20%の区分のため、不動産所得36万円による所得税の増加額は概算7万2,000円(復興特別所得税を含めると約7万3,500円)です。住民税や個別の控除、損益通算などは含めていません。
ローン元本の年間返済額を36万円と仮定すると、税引き後に手元へ残る現金は「96万円-24万円-36万円-約7万3,500円=約28万6,500円」です。減価償却費は現金支出を伴わないため、不動産所得の計算には含めますが、現金収支からは差し引いていません。実際の税額と収支は、取得価額の内訳、借入条件、所得控除などで異なります。
所得税の速算表の使い方
速算表は、課税される所得金額の区分ごとに税率と控除額を当てはめて使用します。
所得税の税率は、分離課税分などを除き、5%から45%までの7段階に区分されています。区分は、1,000円から1,949,000円までが税率5%(控除額0円)、1,950,000円から3,299,000円までが10%(控除額97,500円)、3,300,000円から6,949,000円までが20%(控除額427,500円)、6,950,000円から8,999,000円までが23%(控除額636,000円)です。
さらに、9,000,000円から17,999,000円までが33%(控除額1,536,000円)、18,000,000円から39,999,000円までが40%(控除額2,796,000円)、40,000,000円以上が45%(控除額4,796,000円)となります(参照*3)。
家賃収入に関する所得税額を考える際は、課税される所得金額の区分に応じて税率と控除額を当てはめます。
税率の区分が上がったとすれば、それは家賃収入が着実に育ってきた証でもあります。とはいえ、節税を目的に物件を選び始めると、本来の目的である長期安定収入から物件選びが離れていきます。節税はあくまで副次的な効果と捉えたいところです。
基礎控除の見直しと課税所得への影響
課税される所得金額は所得から各種控除を差し引いて算出するため、基礎控除額の改正は試算結果に直結します。
国税庁の情報によると、令和7年分の基礎控除額は、合計所得金額132万円以下が95万円、132万円超336万円以下が88万円、336万円超489万円以下が68万円です。また、489万円超655万円以下は63万円、655万円超2,350万円以下は58万円となります。
いずれの区分も改正前は一律48万円でした(参照*5)。
基礎控除額はその後も見直されています。令和8年分・令和9年分は、合計所得金額489万円以下が104万円、489万円超655万円以下が67万円、655万円超2,350万円以下が62万円です。令和10年分以後は、132万円以下が99万円、132万円超2,350万円以下が62万円となります(参照*6)。
基礎控除額は、合計所得金額がどの区分に該当するかに加え、どの年分を試算するかによっても変わります。試算の前提として、対象の年分を確認しておくことが大切です。
4. 確定申告が必要になる場合
申告が必要な人と不要な人の基準
給与を受け取りつつ家賃収入を得ている方には、申告が不要となる基準と、その例外規定が存在します。
給与の収入金額が2,000万円以下で、かつ1か所から給与の支払いを受けており、その給与の全額について源泉徴収を受けている給与所得者のうち、給与所得および退職所得以外の所得金額が20万円以下である場合などは、原則として確定申告を行う必要がありません。この基準は、給与収入の額、勤務先の数、源泉徴収の有無という要件を満たした場合などに適用されます(参照*7)。
ただし、例外もあります。同族会社の役員が、その同族会社から給与のほかに貸付金の利子や不動産の賃貸料などを受け取っている場合は、これらの所得が20万円以下であっても、税金の還付を受ける人を除き申告が必要です。役員と特殊な関係にある親族等も同様の取り扱いとなります(参照*8)。
申告の時期と方法
申告の受付期間や提出手段を事前に確認しておくことで、申告準備を無理なく進められます。
申告等の受付期間は、原則として対象年の翌年2月16日から3月15日までです。納付期限も同じく原則として翌年3月15日となります。国税庁ホームページの「確定申告書等作成コーナー」を活用すれば、画面の案内に沿って金額を入力するだけで、自宅から申告書等の作成・提出が可能です(参照*7)。
提出手段としてはe-Taxも便利です。必要な事前準備は利用方式によって異なり、マイナンバーカード方式であれば、開始届出書の提出や電子証明書の事前登録は不要です(参照*9)。
e-Taxなら自宅にいながら手続きを完了でき、所得税の確定申告期間中は24時間いつでも送信できます(24時間利用可能な期間は年により異なります)。還付申告の場合、書面提出よりスピーディーに還付金を受け取れる点もメリットです(参照*10)。
5. 試算で間違えやすい項目
修繕費と資本的支出の区分
同一の工事費用であっても、修繕費と資本的支出のどちらに分類されるかで必要経費に計上する時期が異なります。
一般に修繕費と呼ばれる支出であっても、資産の使用可能期間を延長させたり、価値を高めたりする部分の費用は資本的支出とみなされ、修繕費とは明確に区別されます。資本的支出に該当した金額は、事業所得や不動産所得の計算においてその年の一括経費とはならず、減価償却資産として各年分の必要経費に算入していく必要があります(参照*11)。
区分判定の目安も定められています。おおむね3年以内の周期で行われる修理・改良である場合、あるいは1つの修理・改良等の費用が20万円未満である場合は、修繕費として所得金額を計算して確定申告をすれば、その年分の必要経費に算入できます。この金額基準は工事全体の総額ではなく、修理や改良の案件単位ごとに判定する点に留意が必要です(参照*11)。
20万円未満かどうかという基準は、ワンルーム投資では実感を伴う数字です。東京23区の中古ワンルームの原状回復工事は10万円程度で収まることが多い一方、ファミリータイプでは30万円から50万円かかることも珍しくありません。間取りの選択は、空室期間だけでなく経費計上のしやすさにも影響します。
中古資産の耐用年数と家賃の消費税
中古物件における耐用年数の算出法や、住宅用家賃にかかる消費税の性質も試算の前提となります。
法人税の取扱いとして、中古の減価償却資産を取得して事業の用に供した際は、法定耐用年数ではなく、事業供用時以後の使用可能期間として見積もられる年数を耐用年数とすることができます。見積もりが困難な一定の中古資産では簡便法により、法定耐用年数の全部を経過した資産は法定耐用年数の20%に相当する年数、一部を経過した資産は法定耐用年数から経過年数を差し引いた年数に経過年数の20%を加算した年数とします(参照*12)。
ただし、耐用年数は税法上の区切りであり、建物そのものの寿命とは別物です。鉄筋コンクリート造の物理的寿命は117年と推定する研究もあり、経済的寿命も平均68年程度とされています。償却期間の短さだけを理由に築古物件を選ぶのは、本末転倒です。
消費税については、居住用住宅の貸付けは原則非課税です。ただし、貸付期間が1か月未満の場合や、旅館業法第2条第1項に規定する旅館業に係る施設の貸付けに該当する場合は、非課税措置の対象外となります(参照*13)。
6. おわりに
家賃収入の税金シミュレーションは、総収入金額から必要経費を差し引いて不動産所得を求め、課税所得に速算表の税率と控除額を適用する手順で進めます。収入に加える礼金や権利金、経費化できる借入金利息や業務用部分の固定資産税など、入力項目を精査することが大切です。
確定申告の要否は、給与年収や源泉徴収の有無、給与・退職所得以外の所得が20万円以下かどうかで判断し、同族会社役員の例外にも留意が必要です。修繕費と資本的支出の線引きや、住宅貸付けの消費税非課税措置も踏まえて試算しましょう。
7. 出典一覧
- (*1) No.1370 不動産収入を受け取ったとき(不動産所得)|国税庁
- (*2) 【確定申告書等作成コーナー】-不動産所得の収入計上時期
- (*3) No.2260 所得税の税率|国税庁
- (*4) No.2210 必要経費の知識
- (*5) 令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について|国税庁
- (*6) No.1199 基礎控除|国税庁
- (*7) No.2020 確定申告|国税庁
- (*8) No.1901 同族会社の役員で確定申告の必要な人
- (*9) e-Tax利用の簡便化について教えてください。|【e-Tax】国税電子申告・納税システム(イータックス)
- (*10) No.1904 給与所得者と電子申告
- (*11) 【確定申告書等作成コーナー】-修繕費とならないものの判定
- (*12) No.5404 中古資産の耐用年数
- (*13) No.6226 住宅の貸付け|国税庁


