不動産投資

掲載日2026.10.27

アパート相続でまず確認すべきことは?手続き・税金・判断基準

アパート相続でまず確認すべきことは?手続き・税金・判断基準

この記事のまとめ

アパートを相続したら、最初に確認するのは「誰が相続人か」と「期限が決まっている手続きは何か」の2点です。次の4つを押さえておけば、どこから手を付けるべきかがはっきりします。

  • アパートは土地と建物を別々に評価し、賃貸中の場合は評価額が減額調整されます。
  • 相続人の間で早めに遺産分割の話し合いを行います。相続開始から10年を経過した後は、原則として具体的相続分が考慮されません。
  • 相続登記は、相続により不動産を取得したことを知った日から3年以内の手続きが義務で、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象です。
  • 相続税の申告と納税は、死亡を知った日の翌日から10か月以内に行います。

相続したアパートは、家賃収入を生む資産として次の世代へ引き継がれる一方、手続きが滞ると管理や活用に支障が出ることがあります。相続を単なる事務作業と捉えず、資産を円滑に引き継ぐための手続きとして、早めに取り組むことが大切です。

1. アパート相続で最初に確認する点

相続財産としてのアパートの構造

国税庁は、貸家の敷地として利用されている宅地を「貸家建付地」と呼び、その一例として、自ら所有する宅地に建てたアパートやビルを第三者へ賃貸している場合の敷地を挙げています(参照*1)。したがって、アパートの敷地は更地とは異なり、建物を貸し付けている前提で扱われます。

財産の評価も土地と建物でそれぞれ個別に行われます。土地は原則として、宅地、田、畑、山林などの地目ごとに評価し、その方法には路線価方式と倍率方式の2つがあります(参照*2)。アパート相続においては、敷地と建物の双方について評価の枠組みを正しく把握することが第一歩となります。

相続人の確定と遺産分割の期限

法務省は、不動産を所有していた親が亡くなった場合の対応として、まず相続人間で早めに遺産分割の話し合いを行うよう促しており、遺産分割により不動産を取得した人は法務局で相続登記をする必要があるとしています(参照*3)。

協議がまとまらないなどの理由で遺産が長期間放置されると、遺産分割が未了のまま次の相続が発生し、権利関係が複雑化して管理や処分が一段と困難になります。

遺産分割協議がまとまらない間も、家賃の振込先や修繕の判断など、アパートの管理に関する調整が必要になることがあります。入居者がいる限り、建物の管理は1日も止められません。管理や賃貸経営を滞らせないためにも、相続人間の話し合いは早めに始めることが大切です。

また、関係書類の紛失や散逸によって、生前贈与や被相続人への寄与分を考慮した具体的相続分の算定が難しくなる恐れもあります。そのため、相続開始時から10年を経過した後の遺産分割は、原則として具体的相続分を考慮せず、法定相続分や遺言による指定相続分に沿って画一的に処理されることになりました(参照*4)。

期限がある手続きの全体像

アパートの相続手続きには、相続登記と相続税の申告という手続きが存在します。

相続登記に関しては、相続人が不動産を相続により取得したと知った日から3年以内の申請が法的な義務となりました。正当な理由なく登記を怠った場合、10万円以下の過料に処される可能性があります。遺産分割協議によって不動産を取得した際にも、協議成立から3年以内にその内容に応じた登記を行わなければなりません(参照*3)。

相続税の申告は、被相続人が死亡したことを知った日(通常は死亡日)の翌日から10か月以内に行う決まりです。国税庁の例示によれば、1月6日に死亡したケースでは同年の11月6日が申告期限となります(参照*5)。登記は「取得を知った日」、相続税は「死亡を知った日の翌日」から起算されるため、期限の数え方の相違に注意が必要です。

2. 相続登記の義務化と手続き

義務化の内容と期限・過料

不動産の相続登記は義務化されています。相続人は、不動産の取得を知った日から3年以内に相続登記を申請しなければなりません。遺産分割協議を経て取得した場合は、協議が成立した日から3年以内です。

正当な理由なく登記を怠れば、10万円以下の過料の適用対象です。正当な理由としては、相続人が極めて多数で戸籍関係書類等の収集に膨大な時間を要する場合や、遺言の有効性が争われている場合、重病などの事情が想定され、該当するかどうかは登記官が個別の事情を精査して判断します(参照*4)。

過料処分までの手順は3つあります(参照*3)。

  1. 登記官が義務違反を把握すると、義務違反者に対して登記を促す催告書を送付します。
  2. 指定期日までに登記がされない場合、登記官から裁判所へ義務違反が通知されます。ただし、相続人からの弁明を受け、正当な理由があると認められれば通知はされません。
  3. 通知を受理した裁判所が要件を審査したうえで、過料を科す裁判を実施します。

令和6年(2024年)4月1日より前に相続した不動産も、相続登記をしていなければ義務化の対象です。期限は原則として令和9年(2027年)3月31日ですが、相続で取得したことを知ったのが令和6年4月1日以降の場合は、知った日から3年以内に相続登記を申請する必要があります(参照*6)。

原則の期限である令和9年3月31日まで、残りはおよそ5か月です。親から引き継いだまま名義を変えていない不動産がある方は、早めに登記簿を確認しましょう。戸籍の収集には時間がかかる場合があるため、必要な手続きを確認し、期限に余裕を持って準備することが大切です。

相続人申告登記の活用

期限内に相続登記を申請するのが難しい場合は、相続人申告登記という簡便な手段を利用できます。

この制度は相続登記義務の履行を容易にする目的で新設され、令和6年(2024年)4月1日に施行されました。自身が登記簿上の所有者の相続人である旨を3年以内の期限内に登記官へ申し出れば、義務を履行したものとみなされ、特定の相続人による単独の申し出も可能です。他の相続人分を代理して申し出ることも認められています。

ただし、遺産分割成立後の登記義務を本制度で代替することはできません。権利関係を公示する効力もないため、不動産の売却や抵当権の設定を行う際には、正式な相続登記が必要となります(参照*3)。

制度の効力が及ぶ範囲にも留意が必要です。相続人申告登記は申出人本人のみについて義務を履行したとみなされるため、相続人全員が義務を果たした状態にするには、各自が申出を行う必要があります。ただし、複数人が連名で1通の申出書を作成すれば、まとめて手続きを進めることが可能です(参照*3)。

登記の負担を減らす制度

相続登記に関連して、所有不動産の把握や費用負担の軽減、登録情報の変更に関する諸制度が整備されています。

被相続人名義の不動産を把握する手段の一つとして、令和8年(2026年)2月2日に所有不動産記録証明制度が開始されました。所有者本人や相続人などの請求に応じ、登記官が、指定された氏名・住所等をもとに全国の登記記録から該当する不動産を一覧にして証明する仕組みです。ただし、氏名・住所が登記記録と一致しない不動産や、登記簿がコンピュータ化されていない不動産などは抽出されないことがあり、この制度だけで漏れなく把握できるとは限りません。

請求できるのは、所有権の登記名義人本人やその相続人などです。最寄りの法務局窓口のほかオンラインでの請求にも対応しており、窓口交付の手数料は1通あたり1,600円です(参照*4)。

費用面では、土地を対象とする登録免許税の免税措置が講じられています。土地の相続による所有権移転登記や、表題部所有者の相続人が行う所有権保存登記において、不動産価額が100万円以下の土地であれば非課税となります。

移転登記は平成30年11月15日から令和9年(2027年)3月31日まで、保存登記は令和3年(2021年)4月1日から令和9年(2027年)3月31日までの登記申請が対象です。適用を受けるには申請書へ「租税特別措置法第84条の2の2第2項により非課税」と明記する必要があり、記載漏れがあると減免を受けられません(参照*7)。

登記完了後の住所や氏名の変更についても義務化が進められています。令和8年(2026年)4月1日以降、不動産所有者が住所や氏名を変更した際は、変更日から2年以内の変更登記が義務付けられます。正当な理由なく放置した場合は、5万円以下の過料が科される可能性があります(参照*4)。

3. アパートの相続税評価と申告

土地と建物の評価方法

相続税の算定において、土地は路線価方式または倍率方式で計算し、家屋は固定資産税評価額を基準に評価します。

具体的な評価方法は3つです(参照*2)。

  • 路線価方式は、路線価が定められた市街地等の土地を評価する手法です。路線価とは道路に面する標準的な宅地1平方メートル当たりの価格で、路線価図に千円単位で記載されています。土地の形状等に応じた奥行価格補正率などを掛け合わせ、敷地面積を乗じて評価額を求めます。
  • 倍率方式は路線価のない地域で用いられ、固定資産税評価額に所定の倍率を乗じて算出します。固定資産税評価額は自治体の窓口で確認可能です。
  • 家屋は固定資産税評価額に1.0を乗じるため、評価額は固定資産税評価額と同額になります。

土地面積の算定基準にも注意を払う必要があります。課税時期の現況面積で評価するため、登記簿上の地積と実測値が食い違う場合は実際の面積に基づきます。ただし、相続税や贈与税の申告に際して、すべての土地に実測が義務付けられているわけではありません(参照*8)。

賃貸中のアパートの評価の調整

第三者へ賃貸しているアパートは、土地・建物ともに賃貸割合などを反映して評価額が調整されます。

貸家建付地の評価額は、自用地価格から「自用地価格×借地権割合×借家権割合×賃貸割合」で求めた控除額を差し引いて計算します。各地の借地権割合や借家権割合については、国税庁サイトの財産評価基準書(路線価図・評価倍率表)で閲覧できます(参照*1)。

建物についても同様の趣旨で減額調整が行われます。課税時期に貸家として供されている家屋は、固定資産税評価額から「固定資産税評価額×借家権割合×賃貸割合」を控除して求めます。例えば、固定資産税評価額が1,000千円、借家権割合30%の地域で賃貸割合が100%であれば、「1,000千円-(1,000千円×30%×100%)」となり、評価額は700千円です(参照*8)。

空室部分の取り扱いにも基準が存在します。継続的に賃貸されてきた独立住戸が課税時期に一時的な空室であったと認められる場合は、課税時期も賃貸されていたものとして評価して差し支えありません。

なお、相続時の課税時期とは被相続人の死亡日を指します。その判定で勘案される事実関係は4つあります(参照*1)。

  • 課税時期前に継続的に賃貸されていたこと。
  • 退去後速やかに新規募集が行われ、他用途に転用されていないこと。
  • 空室期間が課税時期の前後の約1か月程度など、一時的であること。
  • 課税時期後の賃貸が継続的であること。

一時的な空室に該当するかどうかは、空室期間だけでなく、課税時期の前後の賃貸状況や募集の有無、他用途への転用の有無などを踏まえて判断されます。アパートの各部屋の入居状況や募集状況を確認し、評価に必要な資料を整理しておくことが大切です。

敷地内に複数のアパート棟が存在する場合、貸家建付地の評価は原則として棟ごとの敷地単位(1画地の宅地)で行います(参照*9)。

申告・納税の期限と方法

相続税は、課税価格の合計が基礎控除額を上回る場合に、期限内の申告と納付が義務となります。

取得した財産の価額の合計額が基礎控除額の範囲内であれば、相続税の申告も納税も必要ありません。申告義務がある場合、被相続人の死亡を知った日(通常は死亡日)の翌日から10か月以内に手続きを行います(参照*5)。

手元資金が不足している場合に向けた納税手段も用意されています。金銭による一括納付が税の原則ですが、相続税には延納や物納といった特例制度が存在します。

延納は何年かに分割して金銭で支払う仕組みで、物納は相続した不動産などの財産そのもので納付する手法です。延納や物納を希望する際は、申告期限までに税務署へ申請書一式を提出し、許可を得る必要があります(参照*5)。

4. 相続したアパートをどうするかの判断材料

相続したアパートを保有し続けるか売却するか判断する際には、譲渡所得税の仕組みや国の引き取り制度の条件、手続き放置によるリスクを考慮する必要があります。

アパートを保有し続けるか売却するかは、立地や賃貸状況、収支、建物の状態、今後の修繕費、相続人の意向などによって判断が異なります。賃貸需要が見込めない地方や郊外のアパートでは、空室が続くと家賃収入が減る一方、固定資産税や修繕費などの負担が続く可能性があります。現在の収支だけでなく、将来の管理や修繕も含めて検討することが大切です。

売却を選択する場合、取得費は次の方法で算出します。相続や贈与で取得した土地建物を売却した際の取得費は、被相続人らが当初購入した代金や諸手数料を基に計算します。

非事業用の不動産を相続した際に相続人が負担した登記費用や不動産取得税も取得費に算入できます。過去の購入額が不明な場合は売却額の5%相当額を取得費とみなせますが、その際に登記費用などを加算することはできません(参照*10)。

所有期間の判定にも引継ぎの特例があります。相続や贈与による取得では、被相続人らの取得時期がそのまま引き継がれます。したがって、被相続人らの取得時点から、売却した年の1月1日までの経過期間をもって、長期譲渡所得か短期譲渡所得かを判別します(参照*10)。

土地を国庫に帰属させる制度もありますが、建物付きの敷地には適用できません。政府広報オンラインは、利用見込みのない不要な土地を国へ引き渡す「相続土地国庫帰属制度」を紹介しており、引き渡しが完了すれば固定資産税等の負担がなくなります。申請可能なのは相続等により土地を取得した個人に限られ、共有地では共有者全員での申請が必須です。

法務大臣の承認を得たうえで審査手数料14,000円と10年分の土地管理費相当額の負担金を納める必要があります。法務局が窓口となりますが、建物が残る土地や担保権の付いた土地は対象外です(参照*4)。

制度の運用実績も公表されています。財務省財務総合政策研究所の資料によると、2025年10月31日時点での相続土地国庫帰属制度の実績は、申請件数4,556件、帰属件数2,145件(宅地784件、農用地697件、森林132件、その他532件)でした。却下・不承認は計148件、取下げは801件に上ります(参照*11)。

手続きの先送りは将来の選択肢を狭める結果を招きます。法務局は登記放置の弊害として、再度の相続による関係者の膨張と調査の長期化、疎遠な親族間での交渉難航、権利関係の未確定による速やかな売却の阻害といった問題を指摘しています(参照*12)。

アパートは建物を物理的に分けにくいため、相続人の間で共有にすると、売却や修繕の際に合意形成が必要となります。相続後の管理や処分を円滑に進めるには、誰がアパートを引き継ぐか、共有とする場合はどのように意思決定するかなどを、遺産分割協議で確認しておくことが大切です。生前であれば、遺言や代償金の準備など、分割方法について検討する選択肢もあります。

5. おわりに

アパートの相続では、不動産の取得を知った日から3年以内の相続登記、死亡を知った日の翌日から10か月以内の相続税申告と納税など、期限の決まった手続きが続きます。所定の期間内に登記が困難なときは相続人申告登記を活用でき、申し出を行った相続人は登記義務を履行したものとみなされます。

遺産分割の話し合いは早めに進める必要があり、相続開始から10年を過ぎると原則として法定相続分などによる画一的な分割が適用されます。

不動産は買って終わりではなく、買ってからがスタートです。そして相続は、その資産を次の世代へ引き継ぐための大切な節目です。期限のある手続きを確認し、必要な準備を一つずつ進めていきましょう。

6. 出典一覧

執筆者

日本財託Times編集部

松坂 智大

  • 宅地建物取引士
  • FP2級
  • AFP
  • 相続診断士

東京中古ワンルームマンションを中心とした不動産投資、資産形成、賃貸管理に関する情報を発信しています。
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