不動産投資
掲載日2026.10.23
不動産投資の確定申告はどう進める?収入・経費・青色申告の判断基準
この記事のまとめ
不動産投資で得た家賃収入などに係る不動産所得は、総収入金額から必要経費を差し引いて計算したうえで、翌年の所定の期間内に確定申告を行います。進め方を押さえるうえで大切なポイントは、次の4点です。
- 不動産所得は総収入金額から必要経費を引いて計算し、赤字が出た場合は他の所得の黒字と損益通算が可能です。ただし、土地を取得するための借入金利子に相当する部分などは対象外となります。
- 1月1日から12月31日までの所得を、翌年の2月16日から3月15日までに申告します。期限に遅れると、申告内容などによって無申告加算税が課され、延滞税の納付が必要になる場合があります。
- 固定資産税や不動産取得税、業務用資産の借入金利子は必要経費になり、建物などは減価償却費として各年に配分します。
- 青色申告では最高10万円・55万円・65万円の青色申告特別控除や純損失の繰越しが利用でき、承認申請書の提出期限も定められています。
1. 不動産所得と申告の要否
不動産所得の基本的な計算式
不動産投資による家賃収入などに係る所得は、不動産所得として扱われ、所定の計算式に沿って金額を求めます。そして、不動産所得の金額は、その年中の不動産所得に係る総収入金額から必要経費を差し引いて計算します(参照*1)。
つまり、得られた家賃の総額がそのまま課税対象になるわけではなく、必要経費を差し引いた残額が所得となります。会社員が給与を受け取りつつ不動産投資を行う場合も、この不動産所得を算出します。
ここで大切なのは、確定申告を「節税のための作業」と捉えないことです。不動産投資の目的は、長期にわたって安定した家賃収入を得ることであり、節税はあくまで副次的な効果です。節税ありきで物件を選び始めると、賃貸需要の乏しい物件をつかんでしまうおそれがあります。
白色申告の帳簿付けでは、収入と費用を明確に区分して記録します。国税庁は、費用に関する事項について、雇人費、減価償却費、貸倒金、地代、借入金利子、その他の経費といった項目に区分し、取引の年月日や金額を記載するよう定めています(参照*2)。
記帳の際は、賃貸管理会社の収支報告書や金融機関の返済予定表などを補助資料として活用できます。修繕積立金は、支払時に必要経費へ算入できる場合もありますが、管理規約など一定の要件を満たす必要があります。要件を満たさない場合は、実際に修繕が行われた時点で経費算入を検討します。
赤字のときの損益通算
不動産所得が赤字になった年には、他の所得の黒字と差し引き計算できる仕組みが用意されています。
損益通算とは、各種所得金額の計算上生じた損失のうち一定のものについて、定められた順序にしたがい、総所得金額などを計算する際に他の各種所得の金額から控除することです。損益通算の対象となる所得は、不動産所得、事業所得、譲渡所得、山林所得の4種類です(参照*3)。
ただし、不動産所得の損失であればすべて通算できるわけではありません。国税庁は、別荘等のように主として趣味、娯楽、保養または鑑賞の目的で所有する不動産の貸付けに係る損失や、不動産所得の金額の計算上必要経費に算入した土地等を取得するために要した負債の利子に相当する部分の金額を、損益通算の対象外としています(参照*1)。
この「土地等を取得するために要した負債の利子」は、実務で誤解の多いポイントです。ワンルームマンションは一棟アパートに比べて土地の持分が小さいため影響は限定的ですが、売買契約書や精算書で土地と建物の価格按分を確認しておきたいところです。
申告が必要となる基準
給与所得者は、給与の収入金額が2,000万円以下で、給与の支払元が1か所であり、給与の全額が源泉徴収の対象となる場合など、一定の要件を満たし、給与所得・退職所得以外の所得金額が20万円以下であれば、所得税の確定申告が原則不要となることがあります。ただし、所得税の確定申告が不要でも、住民税の申告が別途必要となる場合があります。また、医療費控除などで還付を受けるため確定申告をする場合は、20万円以下の所得も申告に含めます(参照*14)。
申告期間と申告を忘れた場合
確定申告には定められた申告期間があり、期限に遅れた場合の取り扱いも規定されています。
所得税法では、毎年1月1日から12月31日までの1年間に生じた所得について、翌年2月16日から3月15日までの間に確定申告を行い、所得税を納付することが必要です。万が一期限内の申告を忘れた場合でも、その事実に気づいた時点で速やかに申告を行わなければならず、この場合は「期限後申告」として扱われます。期限後申告を行ったり、所得金額の決定を受けたりした際には、申告内容等によって納める税金のほかに無申告加算税が課されます(参照*4)。
加算税の割合は、申告の時期によって異なります。税務署からの調査の事前通知を受ける前に自主的に期限後申告をした場合は、納める税金のほかに、その税額の5パーセントに相当する無申告加算税が課されます。
また、期限後申告によって納める税金は申告書を提出した日が納期限となるため、その日に納付しなければなりません。この場合は、納付の日までの延滞税も併せて納める必要があります(参照*4)。
2. 収入と必要経費の判断基準
収入に含めるものと記帳項目
白色申告の不動産所得における収入は、賃貸料だけでなく雑収入なども適切に区分して記録します。
国税庁の手引きでは、白色申告の収入に関する事項について、賃貸料や雑収入といった適宜な項目に区分し、取引の年月日、事由、相手方、金額を記載するものとされています。保存している契約書や領収書控等によって内容を確認できる取引については、項目ごとに日々の合計金額のみを一括記載することも可能です(参照*2)。
申告書類を作成する際には、物件単位で整理します。決算書・収支内訳書の手引きでは、不動産所得の収入の内訳を貸付け物件ごとに入力し、入力内容が次の画面に一覧で表示されると説明されています(参照*5)。
経費になる税金と借入金利子
不動産投資に伴って支払う税金や借入金の利子は、一定の条件を満たすことで必要経費として計上できます。
業務の用に供される資産に係る租税のうち、必要経費に算入されるものには次のようなものがあります(参照*6)。
- 固定資産税
- 登録免許税
- 不動産取得税
- 地価税
- 特別土地保有税
- 事業所税
- 自動車税
借入金の利子についても明確な取り扱いが定められています。業務を営む方がその業務に使用する資産を取得するために借り入れた資金の利子は、業務に係る各種所得の計算上、必要経費に算入されます。ただし、その資産の使用開始日までの期間に対応する利子相当額については、資産の取得費に含めることも可能です(参照*7)。
経費かどうかで迷ったときは、何を基準に経費とするかではなく、何のために支出したのかを実態で考えることです。管理費、賃貸管理代行手数料、損害保険料、修繕費、ローン利息、税理士報酬などは計上できますが、ローン返済の元本部分は経費になりません。プライベートな食事や観劇といった遊興費も、不動産に投資しているからといって必要経費にはなりません。
減価償却費の考え方
建物などの減価償却資産は、購入した年に全額を経費化するのではなく、耐用年数にわたり年ごとに配分して計上します。
減価償却資産の取得に要した費用は、取得時に全額が必要経費になるわけではなく、使用可能期間の全期間にわたって分割し、経費に算入していくべきものです。減価償却とは、取得価額を一定の方法に基づいて各年分の必要経費へ配分していく手続きを指します(参照*8)。
計算方法は資産を取得した時期によって規定され、適用区分は3つあります(参照*8)。
- 平成10年4月1日から平成19年3月31日までに取得した建物は、旧定額法に限られます。
- 平成19年4月1日以後に取得した建物は、定額法に限られます。
- 平成28年4月1日以後に取得した建物の附属設備や構築物も、定額法のみが適用されます。
建物本体と、建物の附属設備や構築物とでは、定額法に限定される取得時期の区分が異なる点に留意が必要です。
中古資産の耐用年数は、取得後すぐに賃貸など事業の用に供し、法定耐用年数に代えて耐用年数を見積もる場合などに簡便法で算定できます。法定耐用年数をすべて経過した資産は法定耐用年数の20%、一部を経過した資産は「法定耐用年数−経過年数+経過年数×20%」で算出します。鉄筋コンクリート造の47年はあくまで税法上の区分であり、建物の物理的な寿命とは別物です。減価償却費は支出を伴わない費用ですが、年数の経過とともに節税効果は薄れていきます。それを前提に、手取りの家賃で判断しましょう。
3. 青色申告と白色申告の選び方
青色申告の特典と控除額
青色申告を選択すると、特別控除の適用や損失の繰り越しといった税制上の優遇措置を受けられます。
不動産所得または事業所得を生ずべき事業を営む青色申告者が、取引を正規の簿記の原則(一般的には複式簿記)に従って記帳し、作成した貸借対照表および損益計算書を添付した確定申告書を期限内に提出した場合、原則としてこれらの所得を通じて最高55万円が控除されます。令和元年分以前は一律で最高65万円でした。
令和2年分以後については、この最高55万円の控除要件を満たしたうえで電子帳簿保存またはe-Taxによる電子申告を行うことで、最高65万円の青色申告特別控除が受けられます。これ以外の青色申告者は、不動産所得、事業所得、山林所得を通じて最高10万円の控除となります(参照*9)。
赤字が発生した年においても有利な制度があります。事業所得などに損失が生じ、損益通算の規定を適用してもなお控除しきれない純損失の金額があるときは、その損失額を翌年以後3年間にわたって繰り越し、各年分の所得金額から差し引くことが可能です(参照*9)。
なお、令和9年分以後は青色申告特別控除の適用要件と控除額が見直されます。一定の要件を満たしてe-Taxで申告する場合は最高65万円、さらに優良な電子帳簿の保存などの要件を満たす場合は最高75万円となります。簡易な記帳を行う人のうち、前々年の不動産所得または事業所得に係る収入金額が1,000万円を超える場合は、10万円控除の対象外となる改正もあります。対象年分や要件を国税庁の最新情報で確認してください(参照*15)。
白色申告の記帳と帳簿保存
白色申告を選択した場合であっても、記帳および帳簿書類の保存義務が課されています。
青色申告者には一定の要件を満たす帳簿書類を備え付けて記録・保存する義務がありますが、白色申告者に対しても記帳制度や記録保存制度が設けられています。白色申告で確定申告書を提出する際には、総収入金額や必要経費の内容を記載した収支内訳書などの書類を添付しなければなりません(参照*10)。
保存期間は帳簿や書類の種類ごとに定められ、4つに分かれます(参照*10)。
- 収入金額や必要経費を記載した法定帳簿は7年間です。
- 業務に関して作成したそれ以外の任意帳簿は5年間です。
- 決算に関して作成した棚卸表その他の書類は5年間です。
- 業務に関して作成または受領した請求書、納品書、送り状、領収書などの書類は5年間です。
事業的規模かどうかで変わる取扱い
不動産の貸付けが事業として行われているか否かによって、家族に支払う給与の税務上の扱いが異なります。
不動産所得において、青色申告者に係る青色事業専従者給与や白色申告者に係る事業専従者控除額は、不動産貸付けが事業として行われている場合に限り適用され、事業的規模に満たない場合には適用されません(参照*11)。
白色申告における事業専従者控除の金額も規定されています。白色申告の場合、生計を一にする配偶者や親族へ支払った給与等は必要経費に算入できませんが、専ら事業に従事している親族がいる際には、事業専従者控除として配偶者は最高86万円、15歳以上のその他の親族は1人につき最高50万円を必要経費として控除できます(参照*11)。
事業的規模の目安は、一般にアパートなら10室、戸建てなら5棟とされています。ただし、形式的な基準だけでなく、貸付けの実態も踏まえて判断します。
青色申告の申請期限
青色申告で申告を行うためには、事前に承認申請書を提出しておく必要があります。
新たに青色申告の適用を受ける場合は、青色申告を行おうとする年の3月15日までに「青色申告承認申請書」を納税地の所轄税務署長へ提出します。その年の1月16日以後に新規で業務を開始した場合は、業務を開始した日から2か月以内の提出が求められます(参照*9)。
4. 申告書作成の手順と注意点
決算書・収支内訳書の作成手順
不動産所得の申告書類は、国税庁の確定申告書等作成コーナーを利用して作成できます。
決算書・収支内訳書作成コーナーの手引きによると、「不動産所得がある方」を選択することで、青色申告決算書(不動産所得用)の入力画面へ進みます。収入に関しては、貸付け物件ごとに内訳を入力していくと、入力内容が確認画面に一覧として表示される仕組みになっています(参照*5)。
白色申告を行う場合は、作成する書類が収支内訳書となります。手引きに従って「不動産所得がある方」をクリックすれば、収支内訳書(不動産所得用)を作成するための入力画面へ進みます(参照*12)。
作成した申告データは、オンラインでそのまま提出可能です。e-Taxを利用する場合、決算書・収支内訳書作成コーナーで作成した決算書または収支内訳書の電子申告等データは、所得税及び復興特別所得税の確定申告書作成コーナーと連携し、e-Taxを通じて送信できます(参照*5)。
売却時の譲渡所得と分離課税
保有している物件を売却したときの所得は、家賃収入などの不動産所得とは区分して計算します。
土地や建物を売ったときの譲渡所得に対する税金は、事業所得や給与所得などの他の所得と合算せず、分離して計算することになっています。譲渡所得の金額は、土地や建物を売った金額である収入金額から、取得費と譲渡費用を差し引いて算出します(参照*13)。
譲渡所得は、資産を所有していた期間によって区分が分かれます。長期譲渡所得とは、譲渡した年の1月1日時点で所有期間が5年を超えるものをいい、短期譲渡所得とは、譲渡した年の1月1日時点で所有期間が5年以下のものを指します(参照*13)。
判定の基準日は売却した日ではなく、譲渡した年の1月1日時点です。保有中の家賃収入や将来の修繕、売却時の税負担なども踏まえ、保有を続けるかどうかを検討します。ローンを完済した後も、管理費や税金などの支出は続きます。
5. おわりに
不動産投資の確定申告は、総収入金額から必要経費を差し引いて不動産所得を算出することから始まります。税金や業務用資産の借入金利子は必要経費になり、建物は減価償却で各年へ配分します。赤字の年は損益通算を行えますが、土地等を取得するために要した負債の利子に相当する部分などは対象外です。
青色申告を選択する場合は、記帳方法や電子帳簿保存、e-Taxの利用といった条件に応じて控除額が変動し、承認申請書の提出期限も決まっています。1月1日から12月31日までの所得を翌年2月16日から3月15日までに申告するという基本原則を踏まえ、判断に迷う点があれば納税地の所轄税務署や税理士などの専門家へ相談するとよいでしょう。
6. 出典一覧
- (*1) 【確定申告書等作成コーナー】-不動産所得が赤字のときの他の所得との通算方法
- (*2) 個人で事業を行っている方の記帳・帳簿等の保存について|国税庁
- (*3) No.2250 損益通算|国税庁
- (*4) No.2024 確定申告を忘れたとき
- (*5) 決算書作成(青色申告)編
- (*6) No.2215 固定資産税、登録免許税又は不動産取得税を支払った場合
- (*7) No.3264 借入金の利子が取得費になるとき
- (*8) 記帳の仕方 白色申告編
- (*9) No.2070 青色申告制度|国税庁
- (*10) No.2080 白色申告者の記帳・帳簿等保存制度
- (*11) No.2075 青色事業専従者給与と事業専従者控除
- (*12) 収支内訳書作成(白色申告)編
- (*13) No.3202 譲渡所得の計算のしかた(分離課税)
- (*14) No.2020 確定申告
- (*15) 簡易簿記による10万円の青色申告特別控除の対象者の見直し|国税庁


