不動産投資
掲載日2026.07.31
失敗しないマンション経営リスク回避術と空室対策・収支管理の極意
この記事のまとめ
マンション経営リスクを抑えるためには、空室対策と収支管理を両輪で整えることが欠かせません。この記事では、次のポイントを整理します。
- 不動産所得の仕組みを理解し、収入と経費の内訳を把握すること。
- 空室、家賃滞納、原状回復トラブルなど主要リスクを事前に想定すること。
- サブリース契約と集金代行契約の違いを理解し、自分に合う方式を選ぶこと。
- 管理会社の入居率や空室期間の実績を確認し、収支管理を継続すること。
マンション経営の全体像と収益構造
不動産所得の仕組みと収入・経費の内訳
マンション経営の収益は、家賃収入だけで決まるわけではありません。家賃以外の入金も収入として計上する必要があります。国税庁は、不動産所得の金額を「総収入金額から必要経費を差し引いた額」と定めています。総収入金額には、貸付けによる賃貸料収入のほかに、名義書換料、承諾料、更新料、頭金などの名目で受け取るもの、敷金や保証金のうち返還を要しないもの、共益費の名目で受け取る電気代、水道代、掃除代なども含まれます(参照*1)。つまり、家賃以外の入金も収入として計上する必要があり、経費との差額が課税対象となります。オーナーは、毎月の家賃だけを見るのではなく、更新料や共益費相当額も含めた収入の全体像を押さえ、そこから経費を差し引いた実質的な利益を把握することが、収支管理の出発点となります。
マンション経営のメリットと魅力
マンション経営には、リスクだけでなく明確なメリットも存在します。最大のメリットは、給与のほかにもう一つの収入源、いわば「私的年金」を作れることです。ローンの返済期間中は家賃収入を返済に充てながら少しずつ資産を形成し、ローンを完済した後は、家賃収入から管理費などの経費を差し引いた金額がそのまま手元に残ります。毎月入ってくる家賃収入が公的年金を補完する収入源となるため、老後の生活資金への備えとして機能するのです。
都内ワンルームのオーナーとなった投資家は、サラリーマンにとってワンルーム投資が将来の年金不安を払拭してくれる手堅い手段の一つであると述べており、担当者からメリットとリスクの両面について丁寧な説明を受けた上で購入を決断したと語っています(参照*2)。こうした実際のオーナーの声からも、私的年金づくりの手段としてのマンション経営の位置づけがうかがえます。
収支管理が経営を左右する理由
マンション経営の成否は、日々の収支管理の精度に大きく左右されます。家賃収入から経費とローン返済を差し引いた手残りを正確に把握できていなければ、経営が順調なのかどうかを判断できず、リスクへの対応も後手に回ってしまうためです。
不動産所得は、総収入金額から必要経費を差し引いて計算されるため、経費の把握が不十分であれば実際の手取りを見誤ることにつながります(参照*1)。さらに、家賃収入は毎月ほぼ一定である一方、修繕費や固定資産税などの支出は時期が偏りやすく、年間を通した資金繰りを意識しなければローン返済に支障が出る場合もあります。収支管理を継続することで、空室が発生した際にも慌てずに対応でき、主要リスクへの備えにもつながります。
マンション経営で直面する主要リスク
空室リスクと収支悪化の連鎖
空室は、マンション経営で最も直接的に収支を悪化させる要因です。空室が発生すると家賃収入が減少する一方で、ローン返済、管理費、固定資産税などの支出は変わらず続きます。その結果、手残りが圧縮され、不足分を給与などから持ち出してローンを返済せざるを得なくなり、資金繰り全体が悪化していきます。これが空室リスクと収支悪化の連鎖です。
厚生労働省の資料によると、民間賃貸住宅は供給戸数が増加傾向にある一方、賃貸用空き戸数は2023年時点で約444万戸に達しています。同資料は、大家にとって空室が賃貸経営における最大のリスクであると位置づけています(参照*3)。
家賃滞納・原状回復トラブルのリスク
家賃滞納や原状回復をめぐるトラブルも、収益に直結する重要なリスクです。
国土交通省は、原状回復を「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること」と定義し、その費用は賃借人負担としました。そして、いわゆる経年変化、通常の使用による損耗等の修繕費用は、賃貸人の負担になります(参照*4)。この区分を曖昧に運用すると、退去時の費用負担で入居者との争いが生じ、次の入居募集にも影響します。滞納が発生すれば想定した家賃収入が入らず、ローン返済計画にも影響するため、契約時の条件整理と、退去時の費用区分の明確化が実務上の防衛策になります。
サブリース契約に潜む注意点と集金代行という選択肢
賃貸管理の委託形態には、サブリース契約と集金代行契約があります。
サブリース契約では、サブリース会社がオーナーから物件を借り上げ、その物件を入居者に貸し出します。オーナーとサブリース会社が結ぶ契約は、一般に「マスターリース契約」、法律上は「特定賃貸借契約」と呼ばれます。
国土交通省は、サブリースについて、賃貸経営の専門家であるサブリース会社や管理会社がマスターリース契約を結んでオーナーの物件を借り上げ、借り上げた物件を入居者に転貸する仕組みであると説明しています(参照*5)。また同省は、特定賃貸借契約に関する誇大広告の禁止や不当な勧誘の禁止を規定し、契約条件を誤認させるような広告・勧誘を規制しています(参照*6)。
ただし、オーナーが注意すべきなのは広告や勧誘の規制だけではありません。サブリース会社との契約では、オーナー自身が契約上のリスクを負う点に注意が必要です。借地借家法上、借主であるサブリース会社には賃料の減額を請求することが認められており、当初契約した家賃がいつまでも保証され続けるわけではありません。実際、契約の見直し期間である2年から10年程度が経過すると、家賃を減額されてしまうケースが少なくないのです。また、借主であるサブリース会社は借地借家法で保護されるため、オーナー側から契約を解約することは容易ではありません。契約を結ぶ前に、家賃の見直し条件、解約の条件、免責期間や原状回復費用の負担といった契約条件を細部まで確認することが欠かせません(参照*5)。
一方の集金代行契約は、オーナーと入居者が直接賃貸借契約を結び、管理会社は家賃の集金や入居者対応などの管理業務を代行する方式です。家賃はオーナーに直接帰属し、管理手数料は借り上げ方式であるサブリースよりも低廉であることが一般的です。賃貸需要の安定した立地で投資を行い、空室リスクを立地選びで抑えられれば、家賃の1〜2割を手数料として差し引かれるサブリースに頼らず、集金代行契約を選ぶという選択肢が現実的になります。両者の違いを理解したうえで、自分の物件と経営方針に合う方式を比較検討することが重要です。
空室対策の実践ポイント
募集条件と入居者ニーズの適正化
空室対策の第一歩は、募集条件と入居者ニーズの適正化です。
オーナー単独で相場感を掴むのは難しいため、地域の需要に精通した会社と連携し、家賃、初期費用、設備条件を市場に合わせて見直すことが重要です。募集条件が市場から外れていると、内見数そのものが伸びず、空室期間が長期化する原因となります。
この連鎖を断ち切るには、そもそも空室が生じにくく、空室が出ても早期に埋まる物件を選ぶこと、すなわち物件選びと立地選びが出発点になります。賃料の下落しにくい物件には、①東京23区、②最寄り駅から徒歩10分以内、③ターミナル駅に近い、④分譲タイプの鉄筋コンクリート造、⑤オートロック完備、⑥バス・トイレ別、という共通した条件があります。大学進学や就職を機に若者が集まる東京23区は、安定した賃貸需要が見込みやすいエリアと考えられ、こうした条件を満たす物件を選ぶことが空室リスクを抑える基本となります。
不動産会社は、物件調査や価格査定、売買や賃貸の仲介など、空き家等の発生から流通、利活用まで一括してサポートできるノウハウを有しており、所有者の抱える課題の解決や新たなニーズへの対応で活用することができます(参照*7)。
管理会社の選定と入居率の重要性
管理会社の選定は、空室期間の長さと収支に直結します。
日本財託では、空室期間中の管理委託手数料を受け取らず、オーナーに家賃収入を届けてはじめて管理委託手数料を受け取る仕組みを採用しています(参照*8)。また、入居者の家賃滞納はオーナーにとって大きなリスクの一つであるため、日本財託では仮に滞納となっても100%の賃料を保証する仕組みを設けています(参照*8)。このように、空室時や滞納時の手数料・保証の扱いは管理会社によって異なるため、契約前に確認しておくことが大切です。
管理会社を選ぶ際には、入居率や平均空室期間といった具体的な実績、そして空室時の手数料の扱いを確認することで、空室対策の実効性を見極めやすくなります。賃貸管理会社を見極めるポイントとしては、①入居率をWebサイト上で定期的に公表しているか、②リフォーム完了後の即入居可能な部屋を基準に入居率を算出しているか、③管理戸数がおおむね1万戸あるか、の3点が挙げられます。日本財託では2026年6月末時点で、オーナー数11,181名、管理戸数34,323戸、年間平均入居率99%以上を維持しており、この数字を支えているのは徹底した立地選定と、自社スタッフによるきめ細かな入居者対応です。
高い稼働率の例として日本財託が挙げるのが、意外にも世田谷区にある3点ユニットバスのワンルームです。管理日数7,000日以上に対し、空室は60日程度、入居率99.1%を記録しています。港区・中央区・千代田区といった都心の一等地でなくとも、東京23区内で条件を満たした物件であれば、着実に家賃収入を得られるということです。空室になっても早期に次の入居者を確保し、繰上げ返済を続けていくことが、長期的な資産形成につながります。
収支管理と税金の実務ポイント
必要経費と減価償却の考え方
収支管理の要は、必要経費として何を計上できるかを正確に把握することです。
国税庁は、必要経費とすることができるものについて、不動産収入を得るために直接必要な費用のうち家事上の経費と明確に区分できるものであるとし、主なものとして貸付資産に係る固定資産税、損害保険料、減価償却費、修繕費を挙げました(参照*1)。これらは、契約形態がサブリースであっても集金代行であっても、オーナーが物件を保有している以上は共通して発生する項目です。減価償却費は現金の支出を伴わずに経費計上できるため、帳簿上の利益と実際の手残りを一致させて考えることが、収支管理につながります。
仲介手数料など取得価額の扱い
取得時に支払う費用の扱いは、初年度の収支を左右します。
購入時の仲介手数料は、土地および建物のそれぞれの取得価額に算入されるため、その全額を支払った年分の必要経費に算入することはできません(参照*9)。つまり、仲介手数料は購入年に一括で経費にできず、建物部分は減価償却を通じて年ごとに費用化されます。取得時点で節税効果を大きく見積もらないよう、仲介手数料のように取得価額に算入される費用と、支払った年の必要経費にできる費用とを区別し、取得価額に含まれる費目を整理しておくことがポイントです。
おわりに
マンション経営リスクを抑えるためには、収支管理の精度を高め、空室対策の仕組みを整え、契約形態ごとの特徴を理解することが基本となります。サブリースには賃料減額や解約のしにくさといった契約上の注意点があり、集金代行契約を選ぶ道もあります。どちらを選んでも、必要経費や減価償却の考え方は共通して重要です。そして忘れてはならないのは、不動産投資の目的が節税や売却益ではなく、長期にわたって安定した家賃収入を得ることにある、という点です。
信頼できる管理会社と連携し、入居率、空室期間、滞納対応の実績を確認することで、日々の運営は着実に安定していきます。制度と実務の両面から備えを整え、長期の資産形成につなげていくことができます。
参照
- (*1) No.1370 不動産収入を受け取ったとき(不動産所得)
- (*2) 日本財託グループ – 「もう空室リスクは怖くない」
- (*3) 社会・援護局関係主管課長会議資料
- (*4) 住宅:「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」について
- (*5) 適正化のための措置
- (*6) 制度解説
- (*7) 建設産業・不動産業:不動産業による空き家対策推進プログラムについて
- (*8) 日本財託グループ – 管理委託料と空室保証・滞納保証
- (*9) 賃貸用の土地建物を購入した際に支払った仲介手数料の取扱いについて|国税庁


