引っ越しのハイシーズンも一区切りとなり、
賃貸市場は4月から閑散期を迎えます。

入居者募集の力が問われることは言うまでもありませんが、
コロナ禍で賃貸物件の競争環境は変化しています。

そんな中で徐々に広まっているのは、
空室の発生を抑止する『テナントリテンション』という考え方です。

現在の入居者により長く住んでもらえるのであれば、
空室により一時的に収入が途絶えることもなく、
原状回復工事も必要ありません。加えて、家賃水準も維持することができます。

取り組みの効果がすぐには見えにくい側面はありますが、
当社の管理物件の一部でも試行し、
入居者満足度の改善につながっている事例があります。

そこで今回は、賃貸経営の利益を最大化する
テナントリテンションの考え方と当社の取り組みをご紹介します。

テナントリテンションとは、
入居者にできるだけ長く住んでもらうための取り組みを言います。

テナントは「借主」、リテンションは「維持、保持」という意味です。

もし入居者が賃貸借契約をずっと更新し続けてくれるなら、
オーナー様にとってはメリットだらけです。

家賃収入が途絶えることはありませんし、
更新料という臨時収入も得られます。

また、募集時期や賃貸市況、以前の家賃額次第では、
新たな入居者募集時には家賃が下がるリスクもありますが、
同じ家賃のまま契約が更新されれば、その心配もありません。

さらに、入居者募集にかかる手数料や
室内の原状回復費用などの支出を抑えられます。

一方で、防げる空室と防げない空室があることも、
押さえておく必要があるでしょう。

当社では解約時に『解約理由のアンケート調査』を実施しています。

それによると、転勤や転職、卒業、結婚、帰国など、
避けられない事情による解約は、全体の半数以上を占めます。

その他の理由には、お部屋の住環境に関わる不満や「気分転換」層も
一定数含まれています。

この住環境の不満や気分転換による解約を抑止するのが、
テナントリテンションの基本的な考え方です。

一般的には、更新前にちょっとしたプレゼントを差し上げたり、
お部屋の居住環境を改善するなどして、
入居満足度を高めることが施策の目的となります。

当社でも、昨年から試験的に一部の物件で、
更新時期が差し迫った入居者本人へのヒアリングを実施。
入居満足度を高める取り組みを始めています。

中野区で当社が管理する1棟マンションでの事例です。

管理物件においては、通常、契約満了日の3か月前を目途に、
書面で更新の意思確認を行っています。

このマンションでは、契約満了日のおよそ半年前から、
入居に電話して、現在の状況をヒアリングしました。

具体的には、契約更新の意思と住んでいて困っていること、
そして室内の設備の不具合箇所の有無の3点です。

もし不具合が生じている場合、契約を更新してもらえれば、
あなたの負担なしに修繕をしますと提案をするのです。

たとえば、あるお部屋では
『エアコンが古いせいか、効きが悪いので部屋が寒い』
とご相談を受けました。

調べたところ17年前の古い機種だったため、
最新機種に交換し、無事に契約を更新してもらうことができました。

オーナー様の視点で見ると、
エアコンの交換費用およそ10万円の一部は更新料で賄うことができます。

また、いずれにしても次の退去時には
交換を要したであろうエアコンを先行して替えたことで、
入居者満足度を高められました。

別のお部屋では、クッションフロア（CF）の床がボロボロなので、
張り替えて欲しいという要望を受けました。

幸い、荷物が少ない入居者だったため、
家財を一時的に廊下に出して、入居中のまま張替え工事を実施。
無事に契約を更新いただくことができました。

CFの張り替えでかかった費用は8万円余りですが、
ポイントは、この入居者が10年にわたる長期入居者であることです。

現状家賃のままで更新したので、
現在の家賃相場よりも高い家賃収入を今後も得られるのです。

また、この先数年で、もし退去があった際には、
CFの張り替え工事は不要になるので、
原状回復工事の工期を短くすることができます。

その分、早いタイミングで入居可能となったり、
内見を受け入れることが可能になるわけです。

この他にも、エアコンや水回りのクリーニングなど、
さまざまな提案を通じて、入居者の住環境を改善できるよう努めています。

商品券など一過性のプレゼントではなく、
オーナー様にとって物件の資産価値を維持する
「先行投資」になる施策をお勧めしています。

試行段階のため、実際にどの程度の退去抑制効果があるのか、
数字として算出するのは難しいのが現状です。

とはいえ、エアコンを取り換えた入居者からは、
笑顔で『ありがとうございます！』
と感謝の言葉をいただくこともあるなど、
入居者満足度の向上につながっている手応えは感じています。

また、快適な住環境の維持や入居者満足度の向上は、
更新前だけの取り組みに限られるわけではありません。

普段から、設備や騒音、そして漏水といった生活トラブルを迅速かつ地道に
ひとつひとつ丁寧に解決していくことが何より大切です。

閑散期を迎え、引き続き入居者募集の取り組みを強化すると同時に、
入居者満足度の向上を通じて、
オーナー様の賃貸経営の収益最大化に努めてまいります。

日本財託管理サービス　ソリューション事業部
笠原　良太（かさはらりょうた）

◆　スタッフプロフィール　◆
東京都稲城市出身の42歳。
ソリューション事業部で、主に賃貸経営の収益力を改善する設備投資や、
リノベーションなどの提案を行っています。

三度の飯より釣りが好きで、釣り具や釣った魚の写真をInstagramで
毎日コツコツ発信しています。
気づけばフォロワー数6,000人を超えていましたが、何故だか大半が外国人です。