心の距離
2019/08/08
小学校からバレーを始め、実績も残していた私は、バレー強豪の中学で1年の春から唯一レギュラーに入りました。
喜びは感じていたものの、仲良さそうに応援している8人の同期たちの姿を見ると、距離を感じ、心細さを抱いていました。
先輩たちが引退し私たちの代になると、キャプテンに就任しました。
しかし、試合に出ても私任せの展開になることもしばしば。
同期とは心の距離を感じたうえ、キャプテンという責任感から誰に相談することもできず、好きなバレーをやっていても苦しいことが続きました。
「さあ!ここ集中!」
中学3年の4月、フルセットまでもつれ込んだ試合がありました。
トーナメントで勝ち上がるためには、絶対に落とせない試合。
しかし、負けがちらつく展開に声を出してチームを鼓舞するも、響く様子はありません。
結果、なんとか勝てたものの、全く満足のいかない試合展開に我を忘れ、立てかけていた手持ちの黒板を蹴り上げてしまいました。
私の少し後ろを歩いていたチームメイトたちは足を止め、そのままどこかへ歩いていく私の後ろ姿を眺めていたそうです。
(どうすればいいんだろ)
勝ちにこだわりたいけど、声を上げれば上げるほど同級生たちとの心の溝は深まるばかり。
そんな時、声をかけてくれたのは副キャプテンでした。
彼女は、副キャプテンとはいえ試合に出る機会は、多くはありませんでした。
ただ、孤立する私と戸惑う同期との間に入ってくれて、関係をつなぎとめてくれたのです。
私も彼女と一緒にコートに立っていると、心から信頼できて任せることができました。
バレーは唯一、ボールを保持して考えることができないスポーツです。
だからこそ、メンバー同士の信頼関係が大きく左右します。
「彼女を試合に出してください!」
顧問に懇願し、彼女が入るためのポジションを確保するため、代わりに私がアタッカーからセッターへコンバート。
トスを上げる技術だけでなく、戦況に応じた采配を考えなければならない難しいポジションですが、彼女と一緒に試合に出るため、練習時間以外も必死で自主練を重ねました。
引退のかかった最後の夏の大会は、全国3位になった同地区のチームに負けてしまいました。
悔しさはあったものの、キャプテンとして泣くまいと決めていました。
「仁依菜、ありがとう」
エンドラインに整列したとき、副キャプテンが優しく肩に手を置きながら伝えられた途端に、涙腺が崩壊し、涙が止まらなくなりました。
「私、中学の時は怖かったよね。ごめんねー」
つい先日、久々に同期9人で再会。
当時のことを引きずっていた私は、冗談ぽくみんなに切り出しました。
「仁依菜はよく頑張ってたよ。私たちを勝たせてくれたし、強くしてくれて感謝してる」
同期が口々にそのように言ってくれて、ずっと残っていた心のモヤモヤが晴れた気分でした。
特に副キャプテンとは仲が良く、定期的に会っています。
当時と変わらず、周りを理解し必要があれば仲を取り持つ彼女は、今の職場で楽しそうに仕事をしています。
この関係がいつまでも続いて、いずれはお互い家族ができたら、家族ぐるみで旅行したいと思っています。
日本財託 人事総務部 徳納 仁依菜(とくのうにいな)
◆ スタッフプロフィール ◆
東京都調布市出身。
人事総務部にて新卒採用を行っています。
元々教員を目指していたこともあり、人の成長の場に立ち会える仕事をしたく、今の採用の仕事にとてもやりがいを感じています。
昔、モダンバレエを8年間習っており、踊ることが大好きなのでダンスレッスンに通いたいと思っています。