区分所有法が20年ぶりに大改正!老朽化マンションへの対策とは?

2025/12/04

来年4月、区分所有法が実に20年ぶりに改訂されます。
その背景には、マンションの老朽化問題があります。

築40年超のマンションは、2024年末時点で約148万戸。
国土交通省の試算では、10年後には約293万戸、
20年後には約3.3倍の482万戸へと急増すると見込まれています。

さらに、役員のなり手不足や総会参加者の減少も問題です。
建物の修繕が必要にもかかわらず、
決議に必要な定足数を満たせないばかりに、
「必要だと分かっていても決められない」状態になりかねないのです。

こうした状況を踏まえ、老朽化マンションの管理・再生を円滑にするため、
約20年ぶりに区分所有法が改正されることになりました。

そこで今回のコラムでは、
区分所有法改正の背景に加え、新たに制定されるルールを
最大限に活かすための管理組合との関わり方をお伝えします。

まずは、区分所有法とはどのような法律なのか見ていきましょう。

区分所有法は、マンションの専有部分や共用部分の管理方法や総会での意思決定ルールを
定めた、いわば「マンション管理のルールブック」です。

区分所有法の改正点は多岐に渡りますが、
大きなトピックスは管理組合運営の決議要件の緩和です。

管理組合総会に提出された議案を成立させるには、
区分所有者による一定割合以上の賛成票が必要となります。

例えば、規約改定やエレベーターの入れ替えなどをはじめとした、
共用部の大きな変更には特別決議が必要です。

これまで特別決議では、組合員総数の3/4以上かつ、
票数をベースとした議決権総数の3/4以上の同意が必要でした。

その結果、賛成・反対の意思表示をしない区分所有者が多いと、
重要な議案であっても可決できない構造でした。

これが改正後は、全区分所有者の過半数が総会に出席していることを前提に、
その出席者のうちの3/4以上が賛成すれば成立します。

なお、ここでいう「総会出席者」には、会場に実際に出席した方だけでなく、
議決権行使書を提出した方や、委任状により代理人に議決権行使を委ねた方も含まれます。

さらに、長期間にわたり所在不明の区分所有者については、
一定の要件と裁判所の手続きを経れば、
議決権をカウントしない扱いにできる仕組みも設けられました。

2024年から不動産を相続した際は、相続登記が法律で義務付けられましたが、
義務化前は相続登記されないマンションも多く、
だれが所有者か分からないケースが散見されました。

今回の改正で所在不明オーナーが原因で、
必要な決議を行えないといった事態を避けやすくなるのです。

実際、当社の管理物件でも改正前ルールの影響を大きく受けたケースがありました。

板橋区にある築35年、総戸数45戸のマンションです。

築30年を過ぎたあたりから共用排水管の更新工事が必要と判断され、
理事会内では「早く工事を実施すべきだ」という危機感は共有されていました。

しかし、所在不明オーナーが1名いるうえに総会出席率も低く、
特別決議に必要な「組合員数・議決権数それぞれの3/4以上」という要件を満たせず、
総会のたびに工事の実施が先送りにされていたのです。

その間に腐食は進行。
漏水事故と応急補修が増え、区分所有者間のトラブルも増加していきました。

最終的に、時間をかけてようやく賛成票が3/4を超えたときには、
昨今の工事資材や人件費の高騰もあり、
工事費用の総額は当初見積もりより約3割も高くなってしまいました。

区分所有法改正による決議要件の緩和は、今回の事例のような工事費用の高騰といった、
追加コストを防ぐうえでも大きな意味を持ちます。

ただ、改正法はメリットばかりではありません。

決議がしやすくなるということは、総会に参加していないオーナーの知らないところで、
重要事項が決議されることになります。

たとえば、修繕積立金の増額や一時金の徴収、エントランスや共用部仕様の変更など、
資産価値やキャッシュフローに影響を与える決定が、
自分の賛否に関係なく進んでいくこともあり得ます。

これまでは「決まらないこと」が課題でしたが、
これからの課題は「参加しないうちに決まってしまうこと」にも
気をつけていかねばなりません。

つまり、これまで以上に管理組合運営に関心を持ち、
総会でどのような議題が上程されるのか、
そもそもマンションがどのような状態にあるのか、
しっかりとオーナー自身が把握しておく必要があるのです。

まずは、総会の案内が届いた際には必ず議案に目を通してみましょう。

その上で、予定が合う方は総会へ参加してみることを推奨いたします。
会場まで行くのが難しい場合は、オンライン参加が可能か確認してみてください。

最近は、仕事や子育てで忙しいオーナーのために、
オンラインで参加できる仕組みを整える管理組合も増えています。

それでも参加が難しいときは、書面や、
電子契約サービスでの議決権行使を行うことをお勧めします。
管理規約で定めていれば、メールやwebフォームなどでの運用も容認されています。

毎回の総会で「何が議題になっていて、賛成か反対か」を自分なりに考え、
必ずどちらかの意思を示すことを習慣にしてみてください。

それだけでも、「気づいたら不利な決定がされていた」という事態を避けやすくなります。

そして、総会議案のなかでも特に注意が必要なものが、
管理組合の収支に関係する項目です。

総会前に送られてくる議案書には、
年間の収支状況や管理費・修繕積立金の残高などに関する内容が記載、
または資料が同封されるのが一般的です。

まずは「収支報告」を確認し、修繕積立金の残高を見てみましょう。

あわせて、長期修繕計画書や大規模修繕工事の計画・見積書などが添付されている場合は、
そこに記載された今後予定されている大規模修繕の予算額にも目を通しておくと安心です。

修繕積立金の残高と今後見込まれる支出予定を比べるだけでも、
「このままのペースで足りるのか」「将来の値上げが必要になりそうか」の目安がつきます。

新しい区分所有法は、2026年4月から施行される予定です。
そして、今回の改正は管理組合の運営を「自分ごと」として捉え直す良い機会です。

総会への参加や議決権の行使、収支確認といった小さな一歩が、
将来のトラブルや急な負担増を防ぎ、それがマンションの資産価値を守り、
長期にわたって安定して家賃収入を得ることにつながります。

大切な資産であるマンションを将来に渡って守るためにも、
この機会に、組合活動への参加や意見表明という形で、
少しずつ管理組合運営に関わってみてはいかがでしょうか。

日本財託 マーケティング部セールスプロモーション課 M・D

◆ スタッフプロフィール ◆
京都府宇治市出身の31歳。
セミナーの運営やメールマガジンの執筆、広報活動を通じて、
東京・中古・ワンルームの魅力を多くのお客様にお伝えしています。
先日、趣味のクラリネットで木管五重奏のアンサンブルをしました。
演奏したのは、「くるみ割り人形(抜粋)」と「そりすべり」。
クリスマスがテーマの演奏会で楽しく吹くことができましたが、
こういう曲も意外と難しいのです...

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