ペット可物件は空室対策になる?区分マンションで始めるペット共生型賃貸のメリットと注意点
2026/05/21
近年、賃貸市場でペットと暮らせる住まいへのニーズが高まっています。
コロナ禍を機に自宅での過ごし方を見直す人が増えたことに加え、
ペットを家族の一員として捉える意識の広がりもあり、
住まい選びにおいてペット飼育の可否を重視されるようになりました。
実際、ポータルサイト上でもペット可物件は増加傾向にあります。
一方で、ペット可物件の供給は十分とはいえません。
2026年5月時点のSUUMOのペット可物件の掲載割合は約23.5%と、
全体の2割前半にとどまっています。
こうした背景からペット可として募集できる物件は、
借り手にとって選択肢が限られる分、
一般的な賃貸物件との差別化を図りやすい要素といえます。
さらに、単にペット飼育を認めるだけでなく、
リフォームによる室内仕様や契約条件まで整えた「ペット共生型賃貸」として
運用することで、空室対策や賃料設定の見直しにつなげることが可能です。
ただし、管理規約上ペット飼育が認められているからといって、
そのまま募集条件だけを変えればよいわけではありません。
準備のないままペット可にしてしまうと、
退去時の原状回復費や近隣トラブルによって、
オーナーの収益を圧迫する可能性があります。
そこで、本コラムでは当社の事例を紹介しながら、
ペット対応リフォームのメリットや注意点について解説します。
まず、ペット可物件として募集するメリットを改めて整理していきます。
ペット可として募集できる物件は供給数が限られるため、
条件に合う物件を探している入居希望者の目に留まりやすくなります。
立地や競合物件の状況、室内仕様によっては、
周辺相場より高めの賃料設定を検討できる場合もあるでしょう。
また、ペット可物件は転居先の選択肢が限られるため、
入居期間が長くなるケースもあります。
結果として、空室リスクの軽減や安定収入につながりやすいといえます。
一方、ペット共生型賃貸として運用するには、
管理規約や契約内容など事前に整理しておくべき点も少なくありません。
まずペット可物件として募集する前に、マンションの管理規約で、
ペットの飼育が可能かどうかを確認する必要があります。
東京都内の区分マンションでも、2000年代以降に建てられた物件では、
管理規約上、ペット飼育が可能な物件も見られます。
当社で管理する賃貸物件でも、2000年代以降の区分マンション2,950件のうち、
犬猫の飼育が実質的に可能な物件は846件あり、全体の約28%を占めます。
ただし、管理規約でペット可とされていても、自由に飼育できるとは限りません。
たとえば、「1匹まで」「体長50cm以内」「抱きかかえられるサイズまで」
といった制限があるほか、入居者がペットを飼育する場合には、
管理組合に事前申請が必要なケースもあります。
そのため、ペット可物件として募集する際には、管理規約の内容を踏まえ、
募集条件を設定することが欠かせません。
管理規約で、ペット飼育が可能かどうかを確認できたら、
次に、賃貸借契約書の内容を整える必要があります。
書類の準備が不十分なままペット飼育を受け入れてしまうと、
退去時の原状回復費用が高額になったり、
鳴き声による近隣トラブルにつながったりする恐れがあります。
当社では、特約事項として、
ペットによる傷・汚れ・臭いの修繕費用は借主負担とする旨を明記しています。
また、ペットの種類や頭数を変更する場合は事前の許可を必要とし、
近隣トラブルが発生した場合は借主の責任で対応・補償することも定めています。
注意後も飼育状況の改善が見られない場合や周囲への迷惑行為が続く場合には、
飼育を禁止できる旨も盛り込んでいます。
こうした取り決めを事前に明確にしておくことで、
退去後の費用負担をめぐるトラブルや入居中の近隣トラブルを防ぎやすくなります。
そして、オーナーにとって特に懸念されるのが、室内の汚れや傷みです。
たとえ修繕費用が借主負担になるとしても、
室内に大きな傷みが生じることは避けたいところです。
そのため、ペットが暮らすことを前提に、
修繕しやすい仕様にしておく必要があります。
当社の事例では、原状回復費用を抑えるため、主に2つの施工を行いました。
1つ目は、腰壁モールの設置です。
床から1mの高さにアルミモールを設置し、
壁面のクロスを区切ることで、ペットによるひっかき傷が生じた場合でも、
交換範囲を限定しやすくなります。
2つ目は、フロアタイルの採用です。
床全体を張り替えるのではなく、
傷んだ箇所だけを部分的に交換できる床材を使うことで、
退去時の修繕費用を抑えやすくなります。
実際の取り組みとして、当社では武蔵野市のワンルームで
ペット共生型賃貸の募集を行いました。
原状回復費用を抑える工夫として、壁面にアルミモールを設置し、
床材にはフロアタイルを採用。2点の施工費用は約20万円でした。
また、今回の物件ではペット可物件の中でも差別化を図るべく、
ペットとともに暮らしやすい工夫を取り入れています。
例えば、洋室ドアと洗面所ドアにはペット用の出入口を設置し、
洗面室の棚にはペット用トイレ置き場を設けました。
玄関にはリードフックを設置し、洋室の壁には、
マグネットで取り外しできる猫用遊具「にゃんポールMAG」も採用。
この物件では、規約に準じて体長50cm、体重10kg以下の犬猫2匹まで飼育可能とし、
ペット敷金を1カ月分追加する条件で募集を開始しました。
その結果、10日間で5件の問い合わせがありました。
周辺相場が10万5,000円〜11万円のところ、
最終的には賃料12万5,000円で入居が決まりました。
ペット共生型賃貸として室内仕様を整えたことが、
反響獲得と賃料設定の両面で効果を発揮した事例といえます。
ペット可物件へのニーズは高まっている一方で、
ペットと暮らすための室内仕様まで整った賃貸物件は、まだ多くありません。
そのため、区分マンションであっても、ペット共生型賃貸として運用することは、
募集時の差別化につながる有効な選択肢の一つになります。
ただし、単に「ペット可」として募集するだけでは、
退去時の原状回復費や近隣トラブルのリスクが残ります。
管理規約の確認、契約書類の整備、室内仕様の工夫を行ったうえで
取り組むことが大切です。
空室リスクを減らすだけでなく、
物件の価値を高めて賃料アップを実現する収益改善の手段として、
ペット共生型賃貸に目を向けてみてはいかがでしょうか。
日本財託管理サービス 管理部 H・M
◆ スタッフプロフィール ◆
東京都東村山市出身。
管理部に所属し、退去受付業務、建築商材採用業務、民泊運用業務を担当しています。
建築商材の採用では、各メーカーとの打合せを重ね、賃貸市場への影響を考慮しながら、
オーナー様へ付加価値をご提案できるよう魅力的なアイテムを探求しています。
サッカー指導をしているため、休日はほとんどグラウンドで過ごしております。
たまに千葉の吉崎浜、静岡の多々戸浜あたりまで向かい、サーフィンを楽しんでいます。






