数年前の相続対策、そのままで大丈夫?資産価格と制度変化から考える見直しのポイント
2026/10/15
物価上昇が長期化しています。
2026年8月の全国消費者物価指数は、生鮮食品を除く総合が前年同月比1.7%上昇し、
2021年9月から60か月連続の上昇となりました。
一方で、上昇しているのは身の回りの物価だけではありません。
株式や不動産など、資産価格も大きく変化しています。
例えば日経平均株価は、2021年9月末の29,452円から、
2026年10月15日には64,425円まで上昇しました。
わずか5年ほどで約2.2倍となっています。
このように不動産や株式などの資産価格が上昇したことで、
数年前に相続税を試算したときとは、
保有資産の総額そのものが大きく変わっているご家庭もあります。
すでに相続対策を済ませた方も、これまで対策は必要ないと考えていた方も、
現在の状況を改めて確認する必要性が高まっているといえるでしょう。
そこで今回のコラムでは、なぜ今、相続対策の見直しが必要になっているのかを
整理したうえで、これからの資産承継でどのような視点を持つべきかを考えていきます。
まず、この5年間で資産価格がどの程度変化しているのか確認してみましょう。
例えば、2021年時点で、自宅4,000万円、賃貸用不動産6,000万円、
上場株式3,000万円、現預金3,000万円を保有していたとします。
この場合、資産総額は1億6,000万円です。
5年間の路線価や日経平均株価の上昇を考慮すると、
2026年時点で自宅が5,200万円、賃貸用不動産が7,800万円。
そして、上場株式は6,600万円まで上昇し、
仮に現預金が3,000万円のままだった場合、資産総額は2億2,600万円になります。
新たな資産を買わなくても、保有資産の値上がりだけで6,600万円も増えた計算です。
次に相続税評価額を試算します。
被相続人を父、相続人を配偶者と子2人とし、
それぞれが法定相続分に従って相続した場合で、
相続税額は5年前の約740万円から約1,380万円へ増え、約1.8倍になります。
つまり、財産を買い増していなくても、不動産価格や株価が上昇すれば、
相続税対策の必要性は変わり得るということです。
また、資産価格の上昇のほかには、
退職金の受け取りや預貯金の増減、新たな相続による財産取得などにより、
相続対策を見直す必要も出てくるでしょう。
こうした資産価格の上昇や財産の取得によって、
これまで「自分には相続税対策は必要ない」と考えていた方でも、
状況が変わっている可能性があります。
特に、都市部の不動産や株式などを保有している場合は、
資産価格の上昇によって、以前は対象外だった方でも相続税対策を検討すべき
水準まで資産額が増えていることがあります。
だからこそ、相続対策は一度で終わらせず、
現在の資産状況に合わせて見直すことが重要です。
不動産や株式、現預金などを整理し、現在の資産額で相続税を再試算する。
そのうえで、誰に何を残すのか、納税資金を確保できているかまで
確認しておく必要があります。
さらに、見直されているのは資産状況だけではありません。
相続を取り巻く制度そのものも見直されています。
なかでも大きな変化が見込まれているのが、不動産小口化商品です。
都心のオフィスビルなどを500万円、1,000万円単位で購入でき、
少額から投資できるほか、相続税や贈与税の評価額を抑えられる点から
利用が広がってきました。
市場規模は年間約3,000億円に達するとみられますが、
評価方法の見直しを受け、取り扱い会社では販売減や撤退の動きも出ています。
背景にあるのが、2027年1月から予定されている評価方法の見直しです。
小口化商品は取得時期にかかわらず、
市場価格に近い水準で評価する方向が示されています。
そのため、投資額と相続税評価額との差を活用することを主な目的とした相続対策は、
今後、従来と同じ効果を期待することは困難でしょう。
一方で、収益不動産そのものを活用した相続対策ができなくなるわけではありません。
貸付用不動産についても、相続や贈与の前5年以内に取得・新築した一定の物件は、
原則として市場価格の80%で評価することになります。
そして、5年経過後にはおよそ40~50%にまで圧縮されます。
このように、相続直前に収益不動産を購入し、
短期間で評価差を活用する方法には一定の制限がかかります。
ただし、長期保有を前提とした不動産まで、その役割が失われるわけではありません。
相続対策で大切なのは、相続税評価額を下げることだけではなく、
保有している間も収益を生み、
将来にわたって家族に引き継ぐ価値のある資産を選ぶことです。
そのためには、将来も賃貸需要が見込めるか、安定した家賃収入が期待できること、
そして、必要なときに売却しやすいかといった視点が欠かせません。
こうした条件を満たす資産の一つが、都心のワンルームマンションです。
都市部の単身者を中心とした賃貸需要を背景に、家賃収入を得ながら保有し、
将来的にその資産を次世代へ承継する考え方ができます。
複数戸を保有していれば、子どもごとに1戸ずつ承継するなど、
資産を分ける方法も検討しやすくなります。
今回の相続税評価をめぐる見直しも含め、
今後も税制や財産評価の考え方が変わる可能性はあります。
だからこそ、これからの相続対策では
「今、最も評価額を下げられる資産は何か」だけで判断するのではなく、
「制度が変わっても家族に残す意味のある資産か」という視点を持つことが重要です。
相続対策は、一度正解を決めれば終わるものではありません。
今回のシミュレーションのように、以前は相続税対策が必要なかった方でも、
資産価格の上昇によって、現在は相続税の対象となる可能性があります。
すでに対策済みの方も、当時の試算が現在の資産状況や制度に合っているとは
限りません。
まずは現在の資産額で相続税をシミュレーションし直し、
ご自身が相続税の対象となるのか、
対策を見直す必要があるのかを確認することが第一歩です。
以前試算したままの方や、「自分はまだ相続税の対象ではない」と考えている方も、
現在の状況を確認する機会として、ぜひお気軽にご相談ください。
日本財託 オーナー事務局相続サポート課 K・Y
◆ スタッフプロフィール ◆
東京都出身の31歳。
オーナー様に対して、相続対策セミナーの運営や個別面談を通じて、
相続対策のサポートを行っています。
先日、青森県に旅行に行ってきました。奥入瀬渓流の雄大な自然に圧倒され、
日頃の疲れを忘れるほど癒やされました。ぜひ一度行ってみてください!







