マンション大規模修繕で失敗しないために。談合リスクを抑える発注方式とは?

2026/11/05

2026年9月28日、公正取引委員会は、
関東地方のマンション大規模修繕工事をめぐる談合事件で、
施工会社など38社に排除措置命令を出し、
このうち37社に総額約16億3,800万円の課徴金納付命令を出しました。

本来、管理組合の立場に立つべき設計コンサルタントが、
受注する施工会社をあらかじめ決め、
管理組合の工事予算をその会社に伝えていたとされています。

今回、処分の対象となった大規模修繕工事は、
いずれも設計コンサルタントに業務を委託する
「設計・監理方式」で発注されていました。

この方式では、設計コンサルタントに施工会社選びまで任せる場合が多く、
その中立性が損なわれると、管理組合が不正に気づくのは難しくなります。

こうした談合のリスクを抑える方法の一つとして当社が推奨しているのが、
共通の仕様書に基づいて施工会社を広く公募し、
各社の見積もりを比較する「設計・施工方式」です。

この方式は、参加する施工会社を限定しないため、
受注先が事前に決められるリスクを抑えやすくなります。

さらに各社の金額を同じ条件で比べられるので、
不自然な見積もりにも気づきやすくなります。

ただし、どの発注方式が適しているかは、
マンションの規模や管理組合の体制によっても異なります。

そこで、今回のコラムでは、大規模修繕工事の代表的な発注方式の違いと、
管理組合が確認したいポイントを解説していきます。

まず、大規模修繕は主に
「建物診断」「設計」「工事監理」「施工」の4つの業務で構成されています。

発注方式の違いは、これらの業務を誰が担い、
管理組合が誰と契約するかによって分かれます。

一般的な発注方式は「責任施工方式」と「設計・監理方式」の2つです。

一つ目の「責任施工方式」は建物診断から施工までを一つの会社に任せる方法です。

窓口が一つになり、検討にかかる時間を短くできるため、
一棟所有オーナー様の物件で多く採用されています。

一方で、各社が独自に工事内容を提案するため、
複数社を比べても金額の妥当性を確かめにくいという課題が残ります。

特に施工会社選びが難しいのが、投資用の区分所有マンションなど、
役員の人数や理事会の開催回数が限られる管理組合です。

各社の提案内容が異なるため、限られた人数や時間の中で、
どの会社に依頼するか判断するのは容易ではありません。

こうした比較の難しさを解消するために用いられるのが、
二つ目の「設計・監理方式」です。

管理組合は設計事務所や設計コンサルタント会社に建物診断・設計・工事監理を任せ、
設計者がまとめた条件で見積もりを比較したうえで、施工会社とも別途契約します。

設計者が施工会社とは別の立場で工事をチェックできる点が特長で、
規模の大きいマンションで採用されることが多い方式です。

ただし、設計監理費が別にかかるうえ、
設計者が特定の施工会社と不適切な利益関係にあると、
管理組合の知らないところで受注先が決まってしまうおそれもあります。

第三者の視点を入れる設計・監理方式は一見良さそうに思えるかもしれませんが、
今回の談合事件も、この方式で発注されていました。

そこで、2つの方式の課題を踏まえ、
現在、当社がご提案しているのが「設計・施工方式」です。

同方式では、共通の仕様書をもとに複数の施工会社の見積もりを比較できるようにし、
選定過程の透明性と進めやすさの両立を目指しています。

具体的には、設計会社が建物診断と設計を行い、
工事の範囲や仕様を共通の仕様書としてまとめます。

そのうえで、施工会社を業界新聞での公募や区分所有者の皆様からの推薦で募り、
各社に同じ条件で見積もりを依頼する仕組みです。
設計会社とは、取引関係のない施工会社も見積もりに参加することになるので、
施工会社の選考過程の透明性を高めることができます。

実際に、当社が設計・監理を担当したマンションでも、
公募によって10社の応募が集まりました。

共通の仕様書の重要性は、実際の管理組合での事例からも分かります。

築35年・総戸数127戸のあるマンションでは、
当社を含む5社から責任施工方式で見積もりを取り、比較することになりました。

ところが、各社が独自に建物を診断したため、
外壁タイルの補修数量や補修方法など、工事の内容が会社ごとに異なっていました。

特に外壁タイルの補修費用は、
張り替えるのか、ピンを打ち込んで固定するのかといった補修方法や、
補修数量によって大きく変わります。

外壁は建物の中でも面積が大きい部分のため、
こうした違いが見積金額にも影響します。

そのため、金額の差が補修方法や数量、単価のどれによるものかを見分けられず、
この管理組合では仕様をそろえる調整を行い、
後日各社が見積もりを再提出することになりました。

その点、設計・施工方式では共通の仕様書を用いるため、
各社の金額を同じ物差しで比較できるのが特長です。

さらに、公募で施工会社を広く募ることで、
設計者が声をかけた会社だけで見積もり合わせを行う場合に比べて、
受注先が事前に決められるリスクを抑えられます。

大規模修繕工事は十数年に一度、まとまった費用がかかる工事です。

適正な金額で必要な工事を行うことは、建物の資産価値を保つだけでなく、
安定した家賃収入や売却時の評価を支えるうえでも重要です。

当社では、建物診断の結果や見積もりの比較内容を管理組合の皆様にご説明し、
ご納得いただいたうえで工事を進めることを大切にしています。

大規模修繕の進め方や発注方式について、
疑問や不安をお持ちの管理組合・オーナー様は、ぜひお気軽にご相談ください。

日本財託管理サービス ソリューション事業部 A・T

◆ スタッフプロフィール ◆
福島県生まれの61歳。
ソリューション事業部で、建物の劣化診断や長期修繕計画書作成、
修繕・リノベーション工事の提案を行っています。
浜松にいる孫に年に数回会うのを楽しみにしております。
来年2月には、二人目の孫が誕生予定です。


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