10年ぶりに取り戻した音
2025/11/20

演奏会で、クラリネットを演奏するM・Dさん
社会人になるまで、吹奏楽部でクラリネットを吹いていました。
高校ではコンクールの緊張感に痺れ、大学では仲間と夜遅くまで合奏を続け、
初めての海外遠征ではウィーン国立歌劇場で音を響かせたこともあります。
学生時代は、仲間と切磋琢磨しながら練習に励み、
吹奏楽が生活の中心でした。
毎日のように部室に通い、音を合わせ、息を合わせ、
うまくいかずに涙を流した日も、仲間の音に救われた日もありました。
けれど就職を機に、音楽をパタンとやめてしまったのです。
理由は単純で、燃え尽きてしまったから。
社会人として新しい生活が始まると、
音楽のない日々にも次第に慣れていきました。
仕事の忙しさに追われ、帰宅すれば疲れて楽器のことを思い出す余裕もありません。
"あの頃の自分"は、過去の思い出になったつもりでした。
しかし昨年、突然の転機が訪れたのです。
「オーケストラの練習なんだけど、人が足りないから代わりに出てくれない?」
10年近いブランクがあり、しかも初めてのオーケストラだったため、
突然の誘いに最初は戸惑いました。
久々にケースを開き、楽器を組み立て、恐る恐る息を通してみると、
思っていた以上に最初の音がすっと鳴り、微かな手応えを感じました。
10年のブランクを痛感するどころか、身体が音を覚えていたのです。
指が自然に動き、旋律の流れを追ううちに、
少しずつ、あの頃の自分に戻っていくような感覚がありました。
そして迎えた初めてのオーケストラ。
馴染みのない編成と人数の多さに圧倒されながらも、
いざ合奏が始まると、音が重なり合う瞬間の立体感にグッと息を飲みます。
吹奏楽とは違う、弦楽器の響きと管のやり取り。
一つの音を全員で支える感覚に、胸が熱くなり、
「また音楽を続けたい」
そんな気持ちが静かに芽生えた瞬間でもありました。
初練習の後、何度か代奏を頼まれるようになり、
仕事帰りに譜面を開き、週末にホールへ向かう日が続きました。
今では、その楽団でクラリネットの主席を務めています。
年に数回の定期演奏会に出演し、
ステージの上で客席の拍手を浴びるたびに、
あの日、しまい込んだ楽器ケースを開けてよかったと心から感じています。
学生時代は「上手くなりたい」と必死でしたが、
今は仲間と「音を楽しむ」こと、そのものが目的。
これからも一緒に取り組む仲間と楽しみながら、
音楽も仕事も取り組んでいきたいと思います。
日本財託 マーケティング部セールスプロモーション課 M・D
◆ スタッフプロフィール ◆
京都府宇治市出身の31歳。
マーケティング部セールスプロモーション課に所属し、
集客施策の企画・立案やメルマガコンテンツの執筆をしています。
先日、所属しているオーケストラのメンバーで富士急ハイランドに遊びに行きました。
アンサンブル演奏の様子(筆者は左手前)
https://youtu.be/PxctAn26L5U?si=s1AvN30_gTa38lG-






