寡黙な父の背中から感じた「沈黙の中にある信念」
2025/12/25

家族と写真を撮るN・Sさん
「やりたいようにやったらええで」
父の口癖はいつもこの一言でした。
40年以上、警察官として働いてきた父は、
家庭に対しても寡黙で、いつも表情を崩さず必要最低限のことしか話しません。
私が野球を始めたいと伝えた時、
そして、実家の奈良から東京へ就職したいと伝えた時も、
返ってくるのは「そうか。頑張れよ。」の短い返事だけ。
放任主義といえば聞こえは良いですが、
世話好きな母とは正反対で、子供に関わろうとしないように見える父は、
当時の私にはどこか冷たさすら感じていました。
そんな父の印象が変わったのは、大学4年生の夏のころ。
祖父の墓参りの帰り道、父の運転する車で、
私は思い切って尋ねました。
「お父さんって、俺や姉弟が何か言っても全然喋らへんのなんでなん?」。
父は黙ったまま前を見つめていましたが、
やがて低い声で静かに言いました。
「まずは子供の思うように自由にさせてやりたいんや。
例えそれが全然あかんと思ったとしても、
自分で考えてやりたいと言ったことをすぐに否定したくないねん。」
その瞬間、胸の奥に重い衝撃が走りました。
冷たいとすら感じていた父の寡黙な姿は、
実は私たちを信じて見守るための決意の表れだった。
初めて父の本当の姿が見えた気がしました。
否定しないこと。干渉しすぎないこと。
父なりの愛情は、言葉ではなく沈黙に込められていたのです。
さらに驚いたのは、その年、
父が警察の特殊部隊の隊長を務めていたと知ったことでした。
それまでは父が警察官であることをなんとなく知っているだけでした。
人の命を預かる非常に責任ある立場でありながら、
仕事の苦労も、愚痴も、自慢も家庭で一切漏らすことはありませんでした。
特殊部隊の仕事で辛いこともたくさんあったでしょう。
父はその辛さを家庭に持ち込むことは一切なく、
静かに私たちのことを見守ってくれていたのです。
私はそんな父に強い尊敬を抱くようになりました。
社会人5年目となり、後輩が増えた今、
私は父のように行動で示せる大人でありたいと思っています。
もちろん必要な言葉をかける大切さも理解しつつ、
それでも最も人を動かすのは日々の姿勢なのだと実感しています。
私も父のように、口ではなく、何をやってきたか、
背中で後輩たちに道を示しながら、優しく見守る、
そんな存在になれたらと思っています。
「背中で語る」という生き方は古く見えるかもしれません。
しかし、言葉が溢れる現代だからこそ、
沈黙の中にある信念が持つ力はより大きいのだと思います。
冷たいと思い込んでいた父の背中を追いながら、
私も誰かを支えられる大人へ成長していきたいと強く感じています。
日本財託 仕入事業部 N・S
◆ スタッフプロフィール ◆
奈良県橿原市出身の27歳。
仕入事業部に所属し、厳選した優良物件の仕入を担当しています。
最近、ゴルフが上達してきました。
入社時は100ぐらいだったベストスコアが84まで上達しています。






