半世紀ぶりの強羅公園
2019/07/25
先月、両親とともに箱根の強羅(ごうら)公園を訪れました。
一緒に訪れるのは、実に半世紀ぶりのことです。
当時6歳だった私は夏休みを利用して、静岡へ単身赴任していた父のもとへと家族とともに遊びに来ていました。
夜行列車に乗って、さらに在来線を乗り継ぎ、ようやくたどり着いた静岡の赴任先。
父の姿を見かけると、誰よりも先に飛び出していました。
父と合流したのち、家族で箱根旅行へと向かいました。
芦ノ湖で遊覧船を楽しみ、強羅公園では広大な庭園内に咲き乱れるバラや大きな噴水などを見学していました。
『ミーンミンミン!』
強羅公園にこだまする蝉しぐれのなか、聞き覚えのない鳴き声が一種類ありました。
その声の主は、香川ではまったく見たことのない『ミンミンゼミ』。
その鳴き声であることがわかると駆け出し、木から木へ、夢中で目を走らせていました。
はっと気が付き、振り向けば家族の姿はありません。
来た道を戻ってみましたが、誰も見当たりません。
はじめての迷子の経験でした。
さっきまで楽しんでいたはずが、急に心細くなってしまいました。
どれくらいの時間が経ったのか。
あてもなく公園内をさまよっていると、ゆるやかなカーブの先に父の大きな背中を見かけました。
いつもなら走って追いかけるところを、この時は安堵からか、涙をこぼしながら父の後ろを、とぼとぼと歩いていきました。
ほどなく父も私に気が付き、厚い手のひらでごしごしと頭を撫でられながら、無事に家族のもとへと戻ることができました。
「そんなこともあったっけかな」
先月、久々に訪れた強羅公園で、86歳になった父にその話をすると、笑いながら答えていました。
とても大きく感じていた父の背中もいまでは少し小さく感じるようになり、
当時、父の後について歩いていた私も、その日は、父の足元を気にしながら、先導するように歩いていました。
年のせいか出不精になっていた父ですが、いつかまた訪れたいと話していた強羅公園を歩いていると、当時の思い出がよみがえり、会話も弾んで笑顔も絶えません。
その姿を見て、私までうれしくなります。
なかなか予定があわず、両親と過ごす時間も少なくなりましたが、できるだけ予定を合わせ、親孝行を続けていきたいと思います。
日本財託 人事総務部 白川 博司(しらかわひろし)
◆ スタッフプロフィール ◆
香川県観音寺市出身の55歳。
人事総務部に所属し、人事・採用業務を中心に行っています。
今年は四国八十八か所の霊場巡りを終えた証とした、京都の東寺に成満証をいただきに行こうと思っています。