「目指すべき『オヤジ』の背中」
2020/12/24
警察学校で卒業証書を受け取る大村さん
私には実の父親以外に、心の中で「オヤジ」と呼ぶ人がいます。
そのオヤジとの出会いは、今から10年ほど前に遡ります。
私は高校を卒業後、地元・山形県警に警察官として採用されました。
警察学校への入校式前、私は本番に備えて同期約100人全員とともに、
敬礼や行進の練習に参加していたときのこと。
そこに、一人の教官が現れました。
30代半ば、どっしりとした体躯、日焼けした肌にパンチパーマが
まさに「鬼教官」といった雰囲気を醸し出しています。
その教官は私の敬礼を見るやいなや、一直線に向かってきたかと思うと、目の前に来て
「帰れ!」と一喝。
どうやら敬礼時の手の角度が違ったようです。
しかし当時はそんなことは分からず、ただただ恐ろしい人だという印象でした。
入校式を終えた後も、厳しい指導の日々が待っていました。
その教官は逮捕術などの担当で、週2回は指導を受けます。
体力的にも精神的にも限界で、何度も心が折れそうになりました。
そうして入校からちょうど1カ月が経ったある日の授業後、
仲間たちと寮の部屋でくつろいでいると、突然教官が訪れました。
「調子はどうだ?」
いつもはしかめっ面の教官がこの日は見たこともないような穏やかな表情で、
世間話に花を咲かせます。
後から聞くと、入校から最初の1カ月間は「ふるい」にかけるため
あえて厳しく接していたそうです。
驚くと同時に、「鬼教官」の印象が変わった瞬間でした。
訓練中は相変わらずの厳しさでしたが、それ以外の時間では人が変わったように優しく、
ひとりひとりの学生の体調を常に気遣い、風邪をひいたときは心配してくれます。
校内の逮捕術大会で2位の成績をおさめたときは、
自分ごとのように喜び、褒めてくれました。
教官と学生という垣根を越えて寄り添う姿勢は
まさに「オヤジ」のようだったことを覚えています。
そして迎えた卒業式。
「今までありがとうございました」
泣きながら感謝の気持ちを伝えると、
満面の笑みで
「こちらこそ楽しかった、ありがとう」と優しく抱きしめてくれました。
思い返すと、厳しい指導も一人前の警察官になってほしいとの愛情だったのだと感じます。
どんな時でもまっすぐにぶつかってきてくれる教官には
人として「誠実」であることを学びました。
あれから10年。
職場も立場も変わりましたが、目の前の人に真摯に向き合う姿勢は変わっていません。
まだまだ若輩者ではありますが、今後も「オヤジ」の背中を追い、
人として成長していきたいと思います。
日本財託管理サービス 管理部管理課
大村 龍二(おおむらりゅうじ)
◆ スタッフプロフィール ◆
山形県山形市出身の28歳。
管理部管理課に所属し、主に入居者様からのお困りごとへの対応や、お部屋の修繕工事の手配などを行っています。
最近はサウナにはまっており、自宅近くのスーパー銭湯に週に1度は通うほど。
サウナで過ごした次の日の朝はすっきりと目覚め、仕事がはかどっています。