大規模修繕工事の「談合」を防ぐ!管理組合の対応策
2025/07/24
ここ最近、大規模修繕工事をめぐる「談合問題」が話題になっています。
大規模修繕工事の談合疑惑で、
公正取引委員会が30社超に立ち入り検査を行ったという報道もありました。
大規模修繕工事はマンションの資産価値を長期にわたって
保つための大切な工事です。
しかし、談合によって不当に高額な請求が行われてしまうと、
将来予定していた修繕工事の資金が不足する事態にもなりかねません。
資金が足りなければ、積立金の値上げや工事実施時期の延期など、
収益性の悪化や資産価値にも大きな影響を及ぼします。
それでは、マンションオーナーは、
こうした談合にどう立ち向かえばよいのでしょうか?
今回のコラムでは、談合問題の背景を整理し、
そのうえで問題を防ぐための管理組合の対応策をご紹介します。
今回、公正取引委員会が調査に乗り出したのは、
「設計監理方式」と呼ばれる発注方法において発生した談合です。
「設計監理方式」とは、管理組合が選定した設計コンサルタントが、
工事の仕様検討、進捗の監理を行う方式です。
「設計・監理」と「施工」を別の会社が担当することで、
中立的な立場で施工会社を選定。
工事の厳正な監理も可能であり、
修繕工事の8割で採用されているとされています。
このようにメリットの大きい設計監理方式ですが、
現場では正しく運用されていない一面もあります。
施工会社の決定権限は管理組合にあるものの、
実際は、管理組合の知識不足から設計コンサルタントの助言を
そのまま受け入れてしまうケースが少なくありません。
多くの設計コンサルタントは誠実に業務を行っていますが、
ごく一部の不正な意図を持った設計コンサルタントによって、
今回のような問題が引き起こされているのです。
特に、問題として挙げられるのは、
見積もり合わせ、意図的な入札、そしてバックマージンの存在です。
設計コンサルタントは、定期的な発注依頼を約束し、数社の施工会社と癒着。
意図的な入札を実現するために、
複数の施工会社の「ハブ」として、見積もり合わせを主導します。
そして、管理組合には実際の金額よりも高く見積書を提示し、
バックマージンを受け取るのです。
では、こうした談合問題を防ぐために、どのように対処すれば良いのでしょうか?
当社がおすすめするのは、候補先の洗い出し、見積もり依頼、
候補先へのヒアリングといった「施工会社の検討」を設計コンサルに任せるのではなく、
全て管理組合が行うことです。
施工会社の検討を自分たちで行うことで、
設計コンサルと施工会社間の癒着を「仕組み」で防ぐことができます。
とはいえ、信頼できる施工会社の募集や見積書の確認など、
施工会社の検討に必要な工程は、専門知識がない場合、簡単なものではありません。
ポイントは、設計コンサルタントとは別の「中立の第三者」を活用することです。
たとえば当社の場合、専門家によるセカンドオピニオンサービスを提供しています。
一級建築士を含めた専門家が、候補会社の選定や見積書の確認をサポート。
工事範囲や内容に漏れは無いか、不当な価格で見積もられていないか、
品質を犠牲にした安価な提案になっていないかを確認します。
また、施工会社へのヒアリング時に、どのような項目を聞く必要があるかをまとめた
「施工会社ヒアリング評価シート」をお渡しし、
ヒアリング方法についてのアドバイスも行っています。
ここまで、管理組合として、
仕組みの面から「談合」を防ぐ方法をお伝えしてきました。
では、オーナーはこうした問題にどのように向き合えばよいのでしょうか?
大切なことは、管理組合運営に主体的に取り組む姿勢です。
一般的に、大規模修繕工事が管理組合で検討される際には、
「大規模修繕検討開始」の案内がオーナーに通知されます。
こうした案内が届いた際には、まずはしっかりとその内容を確認すること。
説明会が開催される場合には、参加してみること。
こうした行動から始めてみることをお勧めします。
さらに疑問があれば、建物管理会社を通じて、
理事長や理事会メンバーに質問するようにしましょう。
それでも疑問や問題が解消されない場合には、
「修繕委員」に立候補することもお勧めです。
修繕委員は管理組合の補助的な機関として設置される修繕委員会の構成員で、
理事でなくても就任できます。
修繕委員になれば、問題に気づきやすくなるだけでなく、
多くの管理組合では、施工会社を検討する意思決定にも関与することができます。
そのため、談合を防ぐための直接的なアプローチが可能になります。
ここまで談合問題を防ぐ対応策についてお伝えしました。
仕組みとして防ぐためには、
「施工会社の検討」を管理組合が主体となって行う必要があります。
そのためには、オーナー1人1人が建物管理に関心を持ち、
組合運営を主体的に進めることが大切です。
不正を呼び込んでしまう大きな要因は、建物管理に関する無関心にあります。
大規模修繕工事は、十数年に1度の重要な工事です。
資産を守るためにも、まずは管理組合から届いた書類やメールを
しっかりと確認するところから始めてみてはいかがでしょうか。
それが、あなたの大切な資産を守る第一歩になるはずです。
日本財託管理サービス ソリューション事業部 A・T
◆ スタッフプロフィール ◆
福島県生まれの60歳。
ソリューション事業部で、
建物の劣化診断や長期修繕計画書作成、修繕・リノベーション工事の提案を行っています。
最近、70歳の竹内まりやさんと77歳の小田和正さんのコンサートに行ってきました。
年齢を重ねてもなお輝き続けるお2人から、
情熱を持ち続けることの大切さや目標に向かって努力し続けることの素晴らしさ、
そして、人を心から楽しませるエンターテイメントの力を改めて教えてもらいました。






