夜間に一棟まるごと断水!?迅速な漏水対応を可能にするポイントとは
2025/11/06
「シャー」
非常階段の裏から水が吹き上がる音が響き、
地面の水たまりはどんどん広がっていきます。
管理室に設置された警報器の異常を察知し、
現場に駆け付けると、増圧ポンプにつながる配管の一部が裂け、
勢いよく水が噴き出していたのです。
当社では、10月末現在、32,481戸の賃貸物件を管理しています。
そのうち、一棟物件は711棟7,238戸です。
一棟物件では、建物設備の点検や修繕を含む建物管理も行っています。
今回、増圧ポンプの故障が発生したのは、
築19年の地上6階建て総戸数47戸の一棟物件でした。
増圧ポンプは、道路下の水道管から水をくみ上げ、
建物の上階まで届ける「心臓」のような設備です。
この配管が破断すると、3階以上の住戸で断水が発生します。
対応が長引けば、機械室や電気設備への浸水によって、
建物全体に影響が及ぶおそれもあります。
そのため、一刻も早い復旧対応が求められるのです。
そこで今回のコラムでは、実際に発生した増圧ポンプの漏水事故対応事例をもとに、
迅速な復旧を可能にするポイントをご紹介します。
まずは、同じ漏水でも共用部と室内における影響の違いを把握しておきましょう。
室内で発生する漏水は、影響範囲が比較的限定的であり、
養生シートで囲うなど簡易な一次対応で被害を抑えられるケースがあります。
一方で、共用部の配管や設備でトラブルが起きた場合は、
断水や電気設備への影響など、建物全体に波及する可能性があります。
そのため、共用部の漏水は時間との勝負となり、
迅速な復旧対応が何よりも重要となるのです。
そこで当社では、漏水被害を最小限に抑えるための取り組みを行っています。
年に1回の定期点検で設備の劣化状況を確認する際には、
ポンプ本体だけでなく、周辺の共用配管まで入念に点検します。
さらに、ポンプの型番や仕様をあらかじめ把握しておくことで、
耐用年数を迎える前に交換を提案することもできます。
こうした取り組みでトラブルの芽を早期に発見し、対応できる体制を整えています。
しかし、どれほど事前に備えても、漏水を完全には防ぐことはできません。
そのため、一次通報を受けた際に被害が大きいと判断した場合は、
すぐに現場へ急行します。
元栓を一時的に止水し、断水を実施することで、
被害の拡大を防ぐとともに、入居者様への二次被害を最小限に抑えます。
そのうえで、入居者様に少しでも安心していただけるよう、
連絡窓口となるコールセンターと密に連携し、対応方針を共有します。
そして、迅速な復旧対応を支えるのが、
実際に現場で工事を行う協力会社の存在です。
当社では、日頃から水道工事会社とのネットワークを築き、
緊急時にもすぐに動いてもらえる関係性を維持しています。
現在、7社と連携しており、
なかには25年以上にわたり取引を続けている会社もあります。
「日本財託の入居者様が困っているなら」と、
これまでに何度も現場に駆けつけてくれました。
長年築いてきた信頼関係が、夜間や休日のスムーズな対応を支えています。
それでは、冒頭にご紹介した漏水トラブルの詳細を見ていきましょう。
現場に到着したのは、夜の20時過ぎ。
ちょうど夕食や入浴の時間帯と重なり、
入居者様への影響が大きい状況でした。
すぐに現場の状況を確認するため、
漏水が発生したと報告のあった増圧ポンプのもとへ向かいました。
原因を探ってみると、故障していたのはポンプ本体ではなく、
その先に接続されていた配管の破断でした。
一般的に、増圧ポンプの寿命はおおよそ15年といわれますが、
そこに繋がる配管の寿命も見逃せません。
口径や材質、施工時期、水質、圧力条件などによって耐用年数は異なりますが、
築15~20年を超える建物では配管の劣化が進みやすくなり、
トラブルを防ぐには予防保全の実施が欠かせません。
今回の物件は、当社が管理をお預かりしたばかりの物件で、
定期点検を行う前に発生した予期せぬトラブルでした。
協力会社から「1時間半ほどで現場に到着できる」と連絡を受け、
到着までの間、まず着手したのは入居者様への周知と安全確保です。
二次被害を防ぐため、水たまりの前に立ち、
通りかかった入居者様を誘導しながら、水道が使用できないことを丁寧にお詫びしました。
現場での説明とコールセンターでの電話対応が一貫するよう、
断水の理由、復旧手順、おおよその復旧時刻を共有。
入居者様が最も不安に感じるのは、この状況がいつまで続くかです。
少しでも安心していただけるよう、復旧工事が確実に進んでいることを伝えます。
22時過ぎ、水道工事会社が現場に到着。
破断箇所の位置や口径、周辺の腐食状態を確認したところ、
協力会社の事務所に必要な部材が在庫としてあることが判明しました。
すぐに配送手配を行い、夜中の復旧を目指して作業を開始。
そして、日付が変わった午前一時半、無事に復旧工事が完了しました。
工事が完了する直前、
お問い合わせをいただいた5階の入居者様にご協力いただき、通水を確認。
水量・水圧ともに問題なく、修繕箇所からの漏れもありません。
復旧を確認したのち、コールセンターに報告。
すべての対応が完了したのは、午前2時を過ぎた頃でした。
このように、増圧ポンプの配管が破断した場合は、
建物全体に影響を及ぼす可能性があるため、
一刻も早い復旧対応が求められます。
今回は、迅速な初動対応、協力会社との連携、
そして入居者への丁寧な情報提供により、
深夜のうちに復旧を完了することができました。
同じようなトラブルを未然に防ぐためには、
築15年以上の建物における配管の劣化状況を定期的に点検し、
計画的なメンテナンスを行うことが不可欠です。
ただ、それでも完全に漏水の発生を抑えることは難しいので、
夜間帯でも対応できる協力会社とのネットワーク網も欠かせません。
過去には大みそかに断水が発生して、なんとか年をまたぐ前に
復旧したという事例もあります。
電気・ガス・水道は生活に欠かせないライフラインです。
その"当たり前"が変わらず続いていくように、
私たちは現場で守り続けています。
これからも、入居者様の安心と快適な住環境を守り、
オーナー様に安心して賃貸経営を続けていただけるよう、
「予防」と「迅速対応」を徹底し、
信頼される管理会社を目指してまいります。
日本財託管理サービス ソリューション事業部 Y・D
◆ スタッフプロフィール ◆
埼玉県ふじみ野市出身の32歳。
ソリューション事業部オーナーコンサルティング課にて一棟物件のトラブル対応や
オーナー様に工事の提案、付加価値向上、キャッシュフロー改善の提案を実施しております。
ヴィンテージの古着が好きで休日は古着屋巡りをしています。
また、今年結婚をして責任感も増したので今まで以上に仕事を頑張っていきます。






