金持ち東京都に地方から不満!?税の再配分は「人の流れ」と「都市価値」を変えるのか
2025/12/18
2025年度、東京都の税収は過去最高額を更新する見込みです。
令和7年度当初予算では、都税収入が6兆9,296億円と過去最大規模になっており、
単体の自治体として他県と比較しても突出しています。
その一方で、地方との税収格差は拡大しており、
政府は税収の再配分を含む「格差是正策」の検討を本格化させています。
仮に、東京都から地方へ税収が移されるとした場合、
「人の流れ」や「都市の価値」は変わってしまうのでしょうか。
不動産投資家にとって最も重要な点は、
投資物件の所在するエリアに人が集まり続けるかどうかです。
この点において、税収の是正が本格化すれば
「東京の優位性が揺らぐのでは?」と不安に感じる方もいるかもしれません。
そこで今回のコラムでは、
「税収格差の是正が進めば、東京の賃貸需要は揺らぐのか」というテーマを軸に、
人の流れを左右する「社会的資本」「文化的資本」「経済的エコシステム」という
3つの観点から考えていきます。
まずは、政府が検討している「格差是正策」について確認しておきましょう。
政府が検討している税収是正策の基本的な考え方は、
東京に集まりすぎた税収を、地方に再分配するという仕組みです。
なかでも注目されているのが、
法人事業税と法人住民税の地方法人2税です。
企業の本社機能が東京に集中している結果、
地方法人2税のうち、およそ2割強を東京都が占めています。
この構造が、地方との税収格差を大きく広げる要因の一つとなっています。
過去にも、地方法人2税の一部を国税に振り替え、
国から地方へ再配分する是正策が実施されました。
そのため、今後も同様の手法が再び検討される可能性があります。
では、こうした再分配策が実行された場合、
地方から東京への人の流れや東京都の都市としての価値は変わってしまうのでしょうか。
この点、都市が持つ2つの側面を区別して理解することが大切です。
都市には大きく分けて、
毎年、企業活動や人々の所得から生まれ続ける税収という「フロー」と、
長年かけて蓄積されてきた、お金を生み出す基盤としての「ストック」があります。
ストックとは、具体的には、
交通網・鉄道網、大学、企業集積、雇用機会、
文化・娯楽、国際性、クリエイティブ産業などを指します。
政府が格差是正策として直接コントロールできるのは、
あくまで毎年発生する税収という「フロー」です。
一方で、人々がどこに住むか、
企業がどこに拠点を置くかを左右する要因の多くは、
短期間では形成できない「ストック」に依存しています。
そのため、税収の一部が地方へ再配分されたとしても、
ストックの差が一気に縮まるわけではなく、
人の流れも急には変わりにくいと考えられます。
では、東京が持つ都市ストックを3つの観点から整理してみましょう。
1つ目は、人々の暮らしや産業活動の基盤となる
社会的資本です。
東京では、鉄道網、道路網、大学、病院、商業施設といった
社会的資本が、半世紀以上の時間をかけて整備されてきました。
これらは、税収を地方に再配分したからといって、
他地域へ移転できるものではありません。
移動の利便性や教育・医療、就業へのアクセスといった
日常生活の快適性は、居住地選択において大きな影響力を持っています。
2つ目は、アート、音楽、ファッション、IT、スタートアップなどから成る
文化的資本です。
東京には、企業、人材、情報、資本が集中しており、
新しい文化やビジネスが生まれやすい環境が形成されています。
総務省の転入超過データを見ても、若年層の東京志向は長期的に継続しており、
「流行や最先端に触れられる環境」は、強い移住動機となっています。
この文化的資本は、
税制優遇や補助金だけでは代替できない性質を持っています。
3つ目は、企業集積、雇用機会、取引ネットワークから成る
経済的エコシステムです。
税収を生み出す源泉は法人の利益です。
企業は「人材が集まりやすく、交通・情報インフラが整っている場所」に
拠点を置きます。
つまり、企業が東京に集まるからこそ税収が増えるのであって、
"税収が企業を集めるわけではありません"。
この構造が変わらない限り、税収再配分によって企業立地や雇用機会が
大きく地方へ移動するとは考えにくいのです。
企業集積が進むことで雇用が生まれ、雇用が増えることで居住人口が増え、
結果として賃貸需要が維持・拡大される。
この循環が東京では長年にわたって機能してきました。
さらに重要なのは、東京の都市ストックが「完成形」ではないという点です。
山手線周辺、湾岸エリア、ターミナル駅周辺では、
再開発による交通インフラの整備、
オフィス・商業施設・住宅の拡張が現在も進行しています。
これらの再開発は、雇用・居住・消費の場を同時に拡張し、
中長期的な賃貸需要の持続性を高めています。
また、スタートアップ企業の増加や、
企業の集積も続いており、東京の経済的エコシステムは今この瞬間も更新されています。
仮に、東京都の税収が地方へ再配分され、
都の歳入が一定程度目減りしたとしても、
これまで培われてきた都市のストックが失われることはありません。
むしろ、東京という都市が持つ価値は、
今後も人を引きつけ続け、賃貸需要も底堅く維持されるでしょう。
税収の偏在に対する地方の不満から、是正策が議論されていますが、
それは必ずしも「東京から地方へ人が移る」ことを意味するわけではないのです。
都市のストックという"揺らがない土台"がある限り、
東京の賃貸需要は中長期的にも続くと見込まれます。
長期目線で安定した賃貸需要を重視するのであれば、
東京での不動産投資は、今後も最も有力な選択肢の一つになるのではないでしょうか。
日本財託 マーケティング部 セールスプロモーション課 F・M
◆ スタッフプロフィール ◆
タイ・バンコク生まれ。
マーケティング部で、セミナーやHPの運営、メールマガジンの執筆や広報活動を通じて東京・中古・ワンルームの魅力を多くのお客様にお伝えしています。
先日、映画「栄光のバックホーム」を観に行きました。
横田選手の人生に向き合う姿勢と家族の愛に胸を打たれ、
涙が止まりませんでした。






