コスト増を乗り越える賃貸経営―カギは"立地の収益力"
2026/04/23
資材価格や人件費の上昇を背景に、
マンションの管理費や修繕積立金の引き上げが目立つようになりました。
賃貸経営を取り巻くランニングコストは全国的に上昇傾向にあります。
もっとも、すべてのオーナーが一方的に不利になっているわけではありません。
東京のように、エリアによっては賃料上昇が進み、
コストの増加分以上に収益力を向上できている例も見られます。
しかし、その動きは全国一律ではありません。
コスト増を吸収しやすいエリアと、そうでないエリアの差が広がっています。
そこで今回のコラムでは、
空室解消という視点だけでなく、賃料を引き上げられるかどうかも重要になる
インフレ時代の立地戦略についてお伝えします。
賃料上昇を語るうえで、まず確認しておきたいのが東京23区の動向です。
当社が管理する東京23区のワンルームマンションでも、
賃料上昇の動きが確認されています。
2026年1月〜3月に当社で賃貸成約した住戸では、
解約前の賃料と比べて平均8,837円の上昇が見られました。
とりわけ2010年以降に竣工した築浅物件では、
平均13,697円の上昇(改定前比+13.4%)となり、
築年帯によって、賃料を引き上げられる余地にも差が出ています。
アットホーム社が公表した全国主要都市における「賃貸マンション・アパート」の
募集家賃動向を見ると、賃料上昇は東京だけの現象ではないことが分かります。
2026年2月の前年同月比では、福岡市が+12.7%で最も高い伸びを示し、
次いで12.0%で東京が続きます。
加えて首都圏全エリア(東京23区・東京都下・神奈川県・埼玉県)
および札幌市・仙台市・名古屋市・京都市・神戸市の
計11エリアの全面積帯で前年同月を上回っています。
さらに、直近6カ月の変動率で見ても、
東京と同程度、あるいはそれ以上に伸びている都市が散見されます。
東京23区が5.6%、大阪市が5.5%とほぼ同水準で、
名古屋市は7.1%、福岡市は7.8%となっています。
一方で、賃料がほとんど動いていないエリアもあります。
直近6カ月の変動率で見ると、京都市と広島市はそれぞれ1.8%、1.7%にとどまっており、
東京23区や福岡市と比べると伸びは限定的です。
こうしたエリアでは、修繕積立金や内装工事費、設備交換費の価格上昇分を
賃料改定だけで吸収しにくくなります。
そうなると長期保有時の収支の悪化を招き、
賃貸経営の安定性を損なう結果につながりかねません。
もっとも、賃料上昇エリアであれば、
それだけでコスト増に対応できるかというと、必ずしもそうではありません。
修繕費や原状回復費の上昇を吸収できるかを考えるにあたっては、
上昇率だけでなく、月額でいくら増えるのかという「絶対額」を見る必要があります。
たとえば、前年同月比の賃料上昇率が最も高かった福岡市は
12.7%の伸びでしたが、上昇額にすると約7,000円です。
一方、東京23区は伸び率で見ると12.0%でも、
賃料上昇額は約12,000円に達します。
もともとの賃料水準が異なるため、上昇率がほぼ同じでも、
実際に増える賃料額には差が出るのです。
この差は、見かけ上の収益力の違いにとどまりません。
マンションの維持管理コストは全国でほぼ変わらないため、
もとの賃料が低いエリアほどコスト増を吸収しにくく、
収支が圧迫されやすくなります。
では、なぜ賃料を上げやすいエリアと、そうでないエリアが生まれるのでしょうか。
単身者向けの住宅の賃貸ニーズは、
広義においては、単身者数がエリア内で増えているのか、
単身者向け住戸の供給が過剰でないかがポイントになり、
個別物件ではさらに、最寄り駅までの距離や主要駅への交通利便性、
居住環境がポイントになります。
ただ、これだけでは賃料上昇は判断できません。
賃料の上昇余地は、そのエリアの入居者に
賃料上昇を受け止められる所得水準があるかどうかがポイントになるからです。
賃料は、貸し手が希望する金額ではなく、
最終的には「そのエリアで住む人が継続的に支払える金額」に近づいていきます。
厚生労働省の令和7年賃金構造基本統計調査によると、
東京都の一般労働者の平均月給は41万8,300円で、
全都道府県で唯一の40万円超です。
全国平均を上回るのも4都府県(東京都、神奈川県、愛知県、大阪府)に限られ、
最下位の青森県(27万5,200円)との差は月額で約14万円以上にのぼります。
こうした所得差は、賃料改定時にも影響します。
所得水準が高く、単身者の賃貸需要が旺盛なエリアでは、
賃料を上げやすい傾向があります。
逆に、所得水準に上限があるエリアでは、仮にオーナーが値上げを望んでも、
受け入れられる賃料にはそもそも限界があります。
また、賃料が上がりにくいエリアでは、
修繕積立金の引き上げが生じた際に、
その負担を吸収しにくいという問題も発生します。
必要な増額に対応できない区分所有者が増えれば、
マンション全体の管理不全リスクが高まりやすくなります。
資産価値を長期に渡って維持していくためには、
賃料改定と高い稼働率の維持によって、
必要な修繕積立金の引き上げに対応することが欠かせません。
この観点から見ると、東京23区が有力な選択肢になりやすい理由は明確です。
人口流入が続き、企業や大学が集積し、単身世帯の需要が安定している東京23区では、
賃料水準が高いだけでなく、賃料改定の余地も比較的大きく、
空室期間も短くなりやすい傾向があります。
つまり、コストが上昇する局面でも、
賃料と稼働率の両面からコスト増を吸収しやすい構造があるのです。
インフレ時代の現在は、
物件価格や表面利回りだけで判断するのではなく、
そのエリアに、賃料上昇余地があるのかも立地選びに欠かせないポイントです。
日本財託 マーケティング部セールスプロモーション課 M・Y
◆ スタッフプロフィール ◆
広島県広島市出身の24歳。
セミナーの運営やメールマガジンの執筆を通じて、
東京・中古・ワンルームの魅力を多くのお客様にお伝えしています。
先日、エアロバイクを購入しました。雨と花粉症が重なり、
ランニングができていなかった時期にセールで安くなっているものを見つけ、すぐさま購入。
購入してからは毎日使用しており、健康な日々を過ごしています。






