リニアで変わる東京と沿線地域 広域品川圏の開発から読み解く東京の未来
2026/07/30
停滞していたリニア中央新幹線が、新たな段階に入りました。
2026年7月18日、静岡県とJR東海は、
静岡工区の着工の前提となる自然環境保全協定を締結。
具体的な着工時期や開業時期はまだ示されていませんが、
長年の課題となっていた手続きが前進したことで、
リニア計画は実現へ向けて大きく動き出したといえるでしょう。
リニアが開業すれば、品川―名古屋間は最速約40分で結ばれる計画です。
移動時間が短くなれば、沿線地域に住みながら東京の企業で働くことも、
現実的な選択肢になり得ます。
ただし、リニアの開業によって、
東京から地方へ人口が大きく流出するとは考えにくいでしょう。
むしろ、東京へのアクセスが飛躍的に向上することで、
東京の求心力は高まることが期待されます。
そこで今回のコラムでは、過去の交通網整備で見られた人の流れの変化と、
品川周辺で進む開発をもとに、
リニアの開業が東京の求心力をさらに高める可能性を考えます。
交通網の整備は地域に訪れる人を増やす一方、
新たな交通網で結ばれたエリアの住民がより規模の大きな都市へ
移動しやすくなる面もあります。
瀬戸大橋の開通前にあたる1985年から2010年にかけて、
岡山県と香川県の間を通勤・通学する人は、1,365人から3,192人へ増加しました。
これは一方向の流出ではなく、県境を越えた生活圏が広がったことを示す数字です。
一方で、岡山県へ転入した人のうち、四国4県から移り住んだ人の割合は、
20年間で11%から14%へ上昇しました。
交通の利便性が高まったことで、四国からより規模の大きい岡山県へ
人が集まりやすくなったことが読み取れます。
東京湾アクアラインの開通も、
交通インフラが人や経済活動の流れを変えることを示した事例です。
木更津駅前では木更津そごうやダイエーなど大型店の閉店が相次ぎました。
背景には郊外型商業施設の発展など複数の要因がありますが、
アクアラインの開通によって東京都心や湾岸部への消費流出が進んだことも
一因として指摘されています。
また、北陸新幹線の金沢開業前後では、石川県と首都圏の間を公共交通で移動する人が、
年間345万人から520万人へ増えました。
同時に、金沢市から首都圏へ転出した人の数が、
首都圏から金沢市へ転入した人の数を上回る「転出超過」は、
開業前年から開業年にかけて約1.3倍、翌年には約1.5倍となっています。
このように、交通網の整備によって地域間の交流が広がる一方、
人や経済活動が規模の大きな都市へ集まりやすくなる現象を
「ストロー効果」と呼びます。
過去の事例を見る限り、交通インフラは単に移動時間を短縮するだけではなく、
人や企業、お金の流れを変え、都市の求心力そのものを高める役割を果たしてきました。
これはリニア中央新幹線でも同様の変化が起こる可能性があります。
また、東京から地方への移動が容易になれば、企業が主要な機能を東京に残したまま、
より広い地域で事業を展開しやすくなる面もあります。
例えば、東京への出張が日帰りで済むようになれば、
沿線地域に新たに営業所や支店を設ける必要性は低下します。
さらに、沿線地域に雇用や医療、教育、商業などの機能が十分に整わなければ、
交通が便利になるだけでは、定住人口の増加にはつながりにくいでしょう。
交通利便性の向上を地域の成長につなげられるかどうかを考えるうえで、
注目したいのがリニアの始発駅となる品川です。
品川駅周辺では、リニアの開業時期が決まるのを待たず、
道路、地下鉄、オフィス、ホテル、商業施設などの整備が進められています。
品川駅高輪口(西口)では、駅前広場や国道15号周辺の再整備に加え、
国道15号上空を活用した歩行者デッキや、
駅と周辺施設を結ぶ歩行者ネットワークの整備が計画されています。
バスやタクシーなどの乗降場も再配置し、
鉄道から周辺地域へ移動しやすい交通拠点を整える構想です。
さらに、東京メトロ南北線の延伸により、品川と六本木・赤坂方面が
地下鉄で直接結ばれる予定です。
これにより、リニアや新幹線による都市間移動に加え、
品川から都心部へのアクセスも大きく向上します。
この開発は品川駅の周辺だけに限られません。
JR東日本は、浜松町駅から大井町駅までの東京南エリアを
「広域品川圏(Greater Shinagawa)」と位置付け、
各駅を中心とした街づくりを一体的に進めています。
高輪ゲートウェイ駅周辺では「TAKANAWA GATEWAY CITY」の開発が進み、
大井町駅前では「OIMACHI TRACKS(大井町トラックス)」が
2026年3月28日にまちびらきを迎えました。
大井町トラックスの主要街区は延床面積約25万平方メートルで、
オフィス、約80店舗の商業施設、ホテル、住宅、映画館、広場などを備えています。
隣接地では品川区の新庁舎も計画されており、
行政や防災を含む街づくりが進められています。
品川駅西口、高輪ゲートウェイ、大井町の開発を個別に進めるのではなく、
一つの都市圏として連携させ、人や企業を受け入れる機能を高めようとしているのです。
これは単なる駅前再開発ではありません。
交通、ビジネス、宿泊、商業、交流などの機能を広い範囲で整える、
新たな東京の玄関口づくりといえます。
リニア開業により沿線の地方都市にも、
観光客の増加や駅前開発などの効果は期待できます。
ただし、観光客を増やすだけではなく、定住人口の増加を地域全体につなげるには、
駅前の建物だけでなく、道路、公共交通、住宅、医療、教育、商業などを整え、
人が暮らし、企業が活動できる環境をつくる必要があります。
その点、品川周辺ではリニアの開業を待たず、交通網、オフィス、ホテル、
商業施設などの整備が進んでいます。
つまり、リニアは品川駅とその周辺に広がる広域品川圏を新たな玄関口として、
東京経済圏をさらに広げる役割を果たす可能性があります。
こうした変化は、東京の賃貸需要や不動産の資産価値を考える際の判断材料になります。
賃貸需要は人口だけでなく、企業の集積や雇用、人の往来によっても支えられます。
品川・高輪・大井町では、働く、暮らす、滞在するといった都市機能の整備が進み、
東京の企業活動や雇用を支えるエリアも広がっていくでしょう。
このように、誰が、どのような目的で開発を進めているのかを見極めることが、
街の将来性を見極める手掛かりになります。
リニアを見据えて進む品川・高輪・大井町の開発は、
東京が今後も国内外の人や企業を受け入れる機能を強化していく動きを示しています。
将来の人の流れや企業活動を支える投資が続く東京は、
不動産投資において、今後も有力な投資先の一つといえるでしょう。
物件だけでなく、その街で進む開発や投資にも目を向けながら、
投資先を検討してみてはいかがでしょうか。
日本財託 マーケティング部 セールスプロモーション課 A・T
◆ スタッフプロフィール ◆
長野県坂城町出身。
マーケティング部でセミナー企画やHP運営、メルマガを担当し、
「東京・中古・ワンルーム」の魅力を発信しています。
長年愛用したイヤホンから、初の「骨伝導」に買い替えました。
周囲の音を聞きながら音楽を楽しめる新感覚に感動しています。
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