落語がウケなかった私が学んだこと
2026/06/04

初めての海外旅行を楽しむK.Yさん
落語には「間」が大切だと言われます。
しかし、本当に人を楽しませるのは、話術よりも先に「関係性」です。
大学時代、落語研究会に所属していた私は、
そのことを強く実感する経験をしました。
当時の私は、落語は技術がすべてだと思っていました。
録音を何度も聞き、話し方を研究し、
抑揚や間の取り方を細かく練習するのです。
部内で披露すると反応も良く、学生同士の発表会でも、
それなりに笑いを取ることができていました。
ところが、地域の公民館や老人ホームへの慰問になると、
状況は一変します。
先輩が話せば会場は笑いに包まれるのに、
私が同じような古典落語を演じても反応は薄いまま。
笑いは起こらず、会場の空気もどこか静かでした。
最初は「まだ技術が足りないのだろう」と考え、
人物の演じ分けやテンポを工夫し、必死に練習を重ねました。
しかし、どれだけ努力をしても慰問での反応は変わりません。
努力すれば成果につながると思っていた私にとって、
それは大きな挫折でした。
「どうして先輩はあんなに笑いを取れるのだろう」
悩んでいた私は、思い切って先輩に秘訣を聞きました。
すると返ってきたのは、意外なほどシンプルな言葉でした。
「落語の前に、自己紹介をたっぷりやれ」
正直、最初は半信半疑でした。
私は落語をしに来ているのであって、
自分の話をするために来ているわけではないと思ったからです。
それでも、ある日の慰問で、そのアドバイスを試してみました。
大学で何を勉強しているのか、
どんなアルバイトをしているのか、
どのような学生生活を送っているのか。
落語に入る前に、自分自身について丁寧に話してみたのです。
すると、驚くほど会場の空気が変わりました。
それまでほとんど反応のなかった噺で笑いが起こり、
これまでにない手応えを感じることができたのです。
終演後には、こんな言葉までかけてもらいました。
「孫と同じくらいの年齢だから親近感が湧いたよ」
そのとき私は、お客様は最初から「落語」だけを
聞いていたわけではないのだと気づきました。
どこの誰か分からない人の芸を見るよりも、
目の前の学生そのものに興味を持っていたのです。
つまり、慰問の場で求められていたのは、
ただの落語ではなく「学生の演じる落語」だったのです。
私たちは何かを伝えるとき「何を言うか」ばかりに意識を向けがちです。
しかし実際には「誰が、どのような距離感で語るのか」が、
相手の心を動かす大きな要素になります。
現在、私はインサイドセールス部で、お客様に情報を届ける仕事をしています。
落語がウケなかったあの日々を糧に、
相手が本当に求めている情報は何かを考えながら架電しています。
ひとつひとつ言葉を選ぶことを大切にして、
これからも言葉と向き合っていきたいと思います。
日本財託 インサイドセールス部 K・Y
◆ スタッフプロフィール ◆
神奈川県横浜市出身の23歳。
インサイドセールス部に所属し、キャンペーン企画やお客様への
情報提供をしています。
最近、ギターを始めました。引ける音が少しずつ増えていく感覚が
たまらなく楽しく、日々練習をしています。






